同国のアヌティン・チャーンウィーラクン保健相は先月、フェイスブックへの投稿で、精神活性成分のテトラヒドロカンナビノール(THC)の含有量が0.2%未満の大麻草100万本を国民に配布する意思を表明した。利用は医療目的のみに限定される。
配布は、今月9日の大麻栽培に関する新法施行に合わせた措置。政府は最近、麻薬取締法に基づく違法薬物リストから大麻を削除することも決めていた。
タイは2018年、東南アジアで初めて医療用大麻を合法化。今年1月には、THC含有量が0.2%未満の嗜好用大麻の個人使用をアジアで初めて合法化した。ただし商業利用は規制されており、個人であっても商業目的で大麻草を栽培する場合は当局の許可を得る必要がある。
THC含有量が0.2%を超える嗜好用大麻の使用は引き続き禁止され、違反行為には最高15年の懲役が科される。
しかし、現地の専門家からは、大麻の非犯罪化によりTHC含有量が高い大麻の消費が事実上容認されると指摘する声も上がっている。大麻草を政府の監視なく自宅で栽培することが可能になり、THC含有量が高い大麻の消費が暗黙のうちに許容されることになる。
タイでは近年、大麻の医療面での価値が政府当局により認められるようになり、ヘンプやカンナビジオール(CBD)の産業が発達し、さまざまな飲料や美容品が投入されるようになった。世論調査会社ユーガブの最近の調査では、タイの消費者の約73%が、大麻製品が市販されていることを知っていると回答。回答者の半数近くは過去2年間でこうした商品を使用したことがあると答え、約62%は今後12カ月の間にこうした商品を消費することに関心があると答えた。
欧米諸国が医療用と嗜好用の両方で大麻の販売規制を試みる一方で、タイは大麻分野でアジアをけん引することを目指しているようだ。これは今後、外国人観光客の増加と医療ツーリズムの発展につながるかもしれない。
大麻調査会社プロヒビション・パートナーズ(Prohibition Partners)によると、タイの嗜好用大麻市場の規模は2024年までに4億2400万ドル(約540億円)に達する可能性がある。