キャリア・教育

2022.06.03 20:00

リーダーが、「影響力」を超える「インパクト」を実現する方法

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人の上に立って働くリーダーにとって「影響力」が強みであることは、誰もが認めている。取締役会であれ、クライアントを前にしたプレゼンであれ、自分の考えの正しさを証明し、それを相手に納得してもらえる能力は、出世できるか否かを決定づけるものだ。

優れたリーダーが、倫理にかなったかたちで影響力を行使する方法についてまとめた書籍がある。ロバート・チャルディーニが、説得の7つの原則を提唱する『影響力の武器』シリーズだ。以下では、それぞれの原則について、その実践法と併せて紹介しよう。

1. 返報性(Reciprocation):

私たちは、何かを受け取ると、それに報いなくてはならないと考える。何かを求める前に、まずは自分から価値を提供しよう。売り込みはせず、まずは相手の役に立つのだ。

2. 好意:

私たちは、自分が好意を持つ人や、自分と似た人からのほうが、大きな影響を受けやすい。好感度を上げたいなら、親切に接して、相手をほめよう。それと同時に、互いの類似点を強調し、やり取りを重ねて前向きな関係を築き、親近感を育もう。

3. 社会的証明:

私たちは、何が正しいかについて、他の人が何を正しいと考えるのかを基準にして判断する。「自分の素晴らしさ」を自ら喧伝してはいけない。それよりも、満足しているクライアントや顧客の口から、自分の素晴らしさを伝えてもらおう。

4. 権威:

私たちは、専門知識があり、信頼するに足ると思える権威ある人間に従う。信頼性のある専門家という立場を築けば築くほど、その分だけ、こちらの考えに従ってもらえるようになる。

5. 希少性:

私たちは、手に入りにくいものに、より大きな価値を見いだす。自分の考えについて人を説得したいときには、その考えがいかに独創的で有益であるかを説明するだけでは不十分だ。その考えを受け入れなかった場合に何を失うのかを指摘する必要もある。

6. コミットメントと一貫性:

私たちは、言葉や信念、態度、行動が一貫した人間になりたいと思っているし、周囲からも「一貫性のある人間だ」とみなされることを望んでいる。従って、いったん確約したあとに何かを求められた場合には、確約に見合ったかたちで応じようとする。「以前の確約はこうだった」とシンプルに言及するだけで、一貫性を持ちたいという決意が強化され、その後の行動を導くことができる。

7. まとまり(Unity):

私たちは、「我々」の一員とみなす相手には「イエス」と言う。共通の体験や共同作業を通じて、人々がまとまる機会を設けよう。

影響力を強化しようとして熱心に努力するのは素晴らしいことだが、それよりも目指すべき重要なことがある。それは、前向きなインパクトを与えることだ。影響力とインパクトは類義語だが、微妙ながらも意味のある違いが存在する。誰かに影響を与えるとは、威圧せずに相手を説得したり、あるいは、間接的だが総じて重要な手段を介して、相手を変えたりすることを意味する。

これに対して、人に前向きなインパクトを与えるとは、強い印象を与えることで、その人の考え方や人生、あるいはキャリアの道筋が変わることを意味する。別の言い方をすれば、与えた影響が大きければ大きいほど、インパクトが生じやすくなる。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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