本稿ではそのひとつ、Session3「テクノロジーで変わる 私たちと社会の拡張性~魔術とメタバース~」の内容をお届けする。
本セッションに登壇したのは、森ビル新領域企画部の杉山央と、Psychic VR Lab創設メンバーでメディアアーティストとしても活躍するGod Scorpion(ゴッドスコーピオン)。
アーティストと一緒に新しい街づくりを手がける杉山。2018年よりアートコレクティブteamLabと共に東京お台場で開催しているプロジェクト『森ビル デジタルアート ミュージアム:エプソン チームラボボーダレス』では企画運営室室長を務め、同展はコロナ禍以前で年間来場者数230万人を記録。その半数近くは海外からの来場者で、ジャスティン・ビーバーやカニエ・ウェストといった著名アーティストも訪れるなど、大きな話題を呼んだ。
ここ1〜2年でのテクノロジーによる世界の変化を問われ、コロナ禍の影響でオンラインや配信、テレイグジスタンス(離れていてもそこにいるような感覚)コンテンツが広まると同時に、リアルの代替不能な魅力を再確認できた1年だったと答える。そして、森ビルとしてはオンラインやメタバースとアート空間を今後どう融合していくのかを模索しているという。
ゴッドスコーピオンが所属するPsychic VR Labは、18年にVR/AR/MR(仮想/拡張/複合現実)クリエイティブプラットフォーム「STYLY」をリリースしてアーティストに空間表現の場を提供するなど、XR(クロスリアリティ)の技術開発やサービスを展開している。
今年1月には渋谷PARCOでゴッドスコーピオンと音楽家・食品まつり a.k.a. Foodmanのコラボ作品『Fox Sign』をはじめ、100を超えるVR・AR作品を体験できる「NEWVIEW FEST」を開催。ほかにも岡山県の精神科医院にてVRでの心理カウンセリングを展開し、患者と医師の視点交換や俯瞰的目線からのカウンセリングといった、新たな医療の可能性を開拓する試みも行っている。
街とメタバースの関係
メタバースという言葉が社会に浸透しはじめたなかで、街とメタバースの関係をモデレーターの瀧口が問う。杉山はデジタルの力によって街に新たなレイヤーとして表現できる場が生まれ、アーティストらは空間自体の体験をキャンパスとした作品を発想し、人々が楽しく参加できる街の整備が可能になったと語る。
21年に森ビルはNTTドコモと共に、東京・お台場のヴィーナスフォートにてXR空間の実証実験を実施。VR空間にもリアルそっくりの空間を創出し、現地の来場者と遠隔地にいる人がVRゴーグルを通じて、一緒にショッピングをする体験をつくり出した。将来的には、祖父母と孫が遠隔にいながら一緒に出かけられる未来も想像できる、と話す。