テクノロジー

2022.05.28 13:00

「ほんまに宇宙人いるの?」光通信事業に取り組むCTOが語る宇宙開発【伊東せりか宇宙飛行士と考える地球の未来#7】



小山宙哉/講談社

せりか:確かに、地球外生命体が発見されれば、世間の宇宙に対する意識が大きく変わりそうですね!

大学の衛星開発プロジェクトで感じた宇宙開発の課題


せりか:ところで、そこまで地球外生命体に強く関心を持っている永田さんが、ワープスペースで衛星光通信事業に取り組んでいらっしゃるのはどうしてですか。

永田:衛星光通信事業を通して宇宙開発の裾野を広げられれば、探査を加速できますし、深宇宙探査も効率化できますよね。だから衛星光通信事業を推進するのも良い道なのではないかと思ったんです。

せりか:なるほど。衛星光通信事業は、地球外生命体探査のためのインフラ整備にも繋がると考えていらっしゃるということですね! ワープスペースには、どういう経緯で参画されたのでしょうか。

永田:きっかけは学生時代にまで遡ります。高校生の頃から将来は宇宙開発をしたいと思っていて、衛星開発に関われそうな大学を探していたところ、筑波大学には学年や学部を問わず、小型衛星の開発と運用に参加できる「結プロジェクト」という取り組みがあると知り、入学後に早速参加しました。

結プロジェクトは、宇宙に関連することに筑波大学としても、より力を注いでいこうと亀田敏弘先生が中心となって立ち上げられたプロジェクトです。亀田先生は教育者としての思いも強く、衛星開発を通して学生に色々な経験を積んでもらい、社会に送り出していきたいと思っていらっしゃったのかもしれません。ISSの実験棟「きぼう」から小型衛星を放出する無料枠をJAXA から提供いただけることもあり、衛星の打ち上げ実現に漕ぎ着けました。

ところが初号機は、地上との通信が上手くいきませんでした。衛星の要である無線機を含め、部品は宇宙用に特別に開発・実証されたものではなく、一般的なものを改良して使用していたのが原因の一つではないかということでした。その経験を踏まえて2号機では、宇宙空間でも動作した実績がある無線機を購入して搭載すると、無事に通信に成功しました。

とはいえ、宇宙用に開発された部品は高価で、毎回購入しているとプロジェクトは資金難に陥ってしまいます。開発期間が限られているなかで、一般の部品が宇宙空間でも動作するか地上で試験を実施するのも難しい。こういったところが、宇宙開発が大学や高校にまで広がらないハードルになっているのではないかと感じました。そういった出来事があり、亀田先生は「宇宙用の部品を安価に提供したい」「結プロジェクトで(宇宙用に開発されていない)民生品を取り入れた衛星を開発し、実証していこう」と思われたようです。

その後、衛星の開発資金を調達するために、筑波大学に関連するクラウドファンディングを支援している「筑波フューチャーファンディング」に相談に行くと、現ワープスペースCEOの常間地さんと知り合いました。衛星技術に関心を持った常間地さんが「起業してみませんか」と背中を押してくださったこともあり、亀田先生がワープスペースを創業。常間地さんと私は、取締役として参画しました。

せりか:宇宙に関わる仕事に就きたくて、筑波大学の結プロジェクトに参加したところ、その理念を継承しているワープスペースに創業メンバーとして参画されることになったということですね。すごい!
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