ADHD治療薬の使用で、患者の長期失業リスクが減少する可能性

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注意欠陥・多動性障害(ADHD)の人は、成人した後でも、いわゆるニューロティピカル(発達障害ではない人たちを指す言葉)の人と比べると、失業の確率が高くなるだけでなく、収入も平均で17%低いことが判明している。

ADHDに関連した経済的損失は、個々の人物の学歴や性格的特性に関係なく発生している。研究によってばらつきはあるものの、経済的損失の総額は670億ドルから1160億ドルにのぼると推定されている。

さらに、米国医師会(AMA)の精神医学誌「JAMAサイカイアトリー」に掲載された新たな研究により、ADHDと診断された人のなかで、ADHD治療薬を使用した人は、そうでない人と比べて長期失業のリスクが10%低いことが明らかになった。この傾向は、特に女性で顕著だったという。

ADHDは、神経発達に関する障害で、主な症状としては、衝動的な行動をとる、作業記憶(短期記憶)がうまく働かない、落ち着きがない、注意を持続できない、タスクに優先順をつけられない、忘れっぽい、物事を整理するスキルがない、感情を抑えるのに困難を覚えるといったものが挙げられる。

ADHDは子どものころに発現し、学童期の子どもではADHDと診断される者の割合が全世界で最大18%に達している。その症状は、成人後、かなり経つまで続くことがある。

ADHDの子どものうち少なくとも65%は、大人になってからもその症状と付き合い続けることになるとされる。米国では、ADHDと診断とされた人が、成人人口全体の5%を占めている。

診断や治療(あるいはその両方)を受けられずに放置された場合、ADHDは、その人の人生に大きな影を落とすおそれがある。ADHDは、人付き合いのスキルや、行動、対人関係に問題を生じさせることがあり、患者は、うつ病や気分障害、不安症、さらには薬物乱用など、他のさまざまな精神疾患や精神障害にかかりやすいことがわかっている。

JAMAサイカイアトリーに掲載された研究では、抗ADHD処方薬が症状緩和に役立つかどうかを検証するため、スウェーデン国民を対象とした病歴データベースのデータが用いられた。ここから研究チームは、2008年から2013年にかけての調査期間のあいだに、ADHDと診断された30歳から55歳までの成人2万5358人を抽出した。この中で女性が占める割合は約41.5%、男性は約58.5%だった。その大半はスウェーデン生まれで、就学年数は9年を超えていた。
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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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