キャリア・教育

2022.05.21 13:00

ADHD治療薬の使用で、患者の長期失業リスクが減少する可能性


研究者はこのグループから、重篤な知的障害がある者と、就労意思のない者を除外した。結果的に、1万2875人がこの研究の対象となった。これらの人たちに担当医は、メチルフェニデート、アンフェタミン、デキサンフェタミン、リスデキサンフェタミン、アトモキセチンなどのなどのADHD治療薬を処方していた。

研究の対象者は、6カ月未満から24カ月に至るさまざまな期間、ADHD治療薬のうちいずれか1種類を使用していた。さらに研究チームは、フォローアップ期間中に、個々の対象者の投薬中の就労状況を評価し、さらにこれを、同じ人物がいかなる形のADHD治療薬も使用していなかった時期と比較した。

その結果、調査対象者の70%近くが、少なくとも1つの精神障害を併発しているとの診断を受けていたことがわかった。これには、うつ病(40.28%)、不安症(35.27%)、そして、アルコール・薬物依存症などの物質関連障害(28.77%)などが含まれる。

ADHD治療薬の使用期間は、平均で1年あたり49日間だった。対象者のうち、ADHD治療薬を一度も使用したことがない人の割合は、女性で31.6%、男性では31%と少数派だった。

一方で、ADHD治療薬を処方された対象者の中で、フォローアップ期間にも服用を続けていた人は、女性で3.23%、男性で3.46%とごくわずかだった。

対象者の中で、調査期間中に少なくとも1回、長期の失業を経験した人の割合は、女性(35.7%)よりも男性(41%)のほうが高かった。2008年から2013年のあいだの各年で、長期の失業を経験した人の割合は、女性が0.15%、男性が0.4%だった。

研究チームは、論文でこう記している。「ADHDの症状がある個々の人物において、過去2年間のADHD治療薬の使用歴は、その後の長期失業リスクの減少と関係性があることがわかった。この傾向は、特に女性において顕著だった。女性のあいだでは、ADHD治療薬による治療の期間が長くなるほど、長期失業のリスクがさらに減少するという関連性も判明した」

このような結果が出た主な理由について調査チームは、「ADHDの女性は男性と比べて、投薬以外の治療の道も探り、指示を忠実に守る傾向があるからかもしれない」と推測している。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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