イーロン・マスクがツイッター買収の裏で抱くのは新たな南部連合の復活か!?

Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Met Museum/Vogue


それは自己保有の株を大量に手放したいという事情がマスクにはあったのだ。ただ普通に株を売却すると株価が下がるため、株主たちから批判を受けるか、場合によっては経営危機すら疑われる危険性もある。経営者が保有株を売るというのは、会社が危ないというメッセージにも受け取られ、他の株主の望ましくない売りを招く可能性があるわけだ。

そこでマスクは一計を案じ、公共的な目的のために株を売却する、つまりそのためにマスクが税金を払うことを多くの人が望んでいるという構図を前述のツイートでつくり出したのだ。

こうなると、株主たちも強欲だという批判受けることを怖れ、マスクを堂々とは批判しにくくなる。そのような大義名分をつくり出しつつ、ちゃっかりとこのタイミングでストックオプションも行使して、マスクは大量の株式を売り抜けてしまったのだ。

もちろん、これで含み益を守りたいために法案に反対しているという批判も免れ、かつ米国議会には強力なカウンターパンチを喰らわせることにもつながっただろう。マスクは、ツイッターを通じ、一石で何鳥も得たことになる。

その他にもこの3月14日にはロシアのプーチン大統領に向かって、「宣戦布告」のような挑発的ツイートを行っている。

これはツイッターをにぎわしているロシアのウクライナ侵攻に乗っかった構図だが、大変な話題になった。しかしマスクの宣戦布告には裏事情があったのだ。

それは彼が所有する事業であるスターリンクのプロモーションだ。スターリンクは、スペースXが打ち上げた衛星を使った世界中で利用できるインターネットプロバイダサービスだが、これをマスクはウクライナに無償で提供しているのだ。

衛星通信なので、地上でのインフラ設備はかなり省略できるため、ウクライナ軍やウクライナ政府が世界に向けて展開するプロパガンダ戦には非常に好都合であり、ロシア軍にも大きなダメージを与えているのではないかという説もある。

ウクライナ侵攻で西側メディアであるツイッターユーザーの多くが反プーチンで盛り上がるなか、マスクはその話題に乗っかり、自社サービスのこれ以上ないPRを無料で実現してしまったのだ。

ことほどさように、マスクはツイッターを活用しており、今後もそれは加速こそすれ、しばらく止まることはないだろう。

ツイッター買収の隠れた意図


いまやマスクのアカウントのフォロワー数はかつてのトランプを上回る9000万超を誇っている。これは、世界でも有数の影響力を持っていると言ってよい。これは、CNNなどの大手メディアや各国政府に、たった1人で対抗し得る発信力を持っていると言えるのだ。

しかしその一方で、影響力を持ち過ぎれば、そしてそれを自由に行使すれば、トランプのようにアカウントがバンされる可能性も十分にあり得る。それならばツイッターを買ってしまえばいいという発想になるのは不思議なことではない。

さらに裏の裏を読むと、マスクはもっと壮大な野心を秘めている可能性もあると筆者は睨んでいる。

マスクは南アフリカ生まれの移民なので、トランプのように米国の大統領になることはできない。しかし前述の含み益課税の例でもわかるように、政治に対してはかなり強い意見をいくつも持っているようだ。
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文=重枝義樹

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