経済・社会

2022.05.22 07:30

イーロン・マスクがツイッター買収の裏で抱くのは新たな南部連合の復活か!?

Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Met Museum/Vogue

Photo by Dimitrios Kambouris/Getty Images for The Met Museum/Vogue

イーロン・マスクのツイッター買収の本当の狙いとは何か? 表向きにはツイッターを「民主化」することになっている。

では、民主化とは何か? 人々の自由な意思決定を阻害するスパムやボットの撲滅、ユーザーのプラットフォームへの信頼性を確保するためのアルゴリズムの公開、参加者をすべて認証するなど、そのような施策を指すらしい。

しかし、マスクがそれだけのために日本円で5兆円以上もの資金を突っ込もうとしているのであろうか。もしそんな人物であるなら、ここまで成功したビジネスパーソンにはなっていないはずだ。

彼が、最近、突然聖人になったのであれば話は別だが、そうでない限りはやはりその裏には、何か個人的なベネフィット(利益)も想定していると考えるのは自然だ。

トランプ並みにツイッターを利用


まず考えられるのは、自らのアカウントバン(account ban=アカウント取消)の防止だろう。ツイッターでのイーロン・マスクは、かつてのドナルド・トランプ前米国大統領に似ている。

トランプは、ツイッターを通じて世論を煽ることで、自らの政策の実行可能性を高めたり、経済界や金融市場に影響を与えたり、マスコミを含む政敵を攻撃したりするなど、そのような活動を縦横無尽に繰り広げてきた。彼がツイッターから得た恩恵は計り知れない。

かつては世界経済を動かす投資銀行のバンカーたちの最も重要な仕事は、彼のツイートをいち早くチェックすることだと言われたこともあったほど、トランプのそれは重大な影響力も持っていた。

しかし、最終的には意図的に社会を混乱させているとして、8877万ものフォロワーを誇ったトランプのアカウントは、ツイッターによって永久に凍結されてしまった。しかも驚いたことに、彼がまだ現役の米国大統領だったときに。

イーロン・マスクはドナルド・トランプ並みとまでは言わないものの、いままでツイッターでの影響力を存分に行使してきた。

例えば、昨年、米国議会で資産の含み益が富裕層の租税回避の手段になっているため、含み益に対しても課税すべきではないかという法案の議論があった。マスクはそれを批判していたが、そもそも課税対象となる富裕層自体が全米で1000人程度とも言われ、広く支持を集めるのは難しかった。そこでマスクは、自らのフォロワーたちにツイートで次のように問いかけた。

「最近、株の含み益が租税回避策だと批判されている。含み益を得ている本人としては、税金をもっと払いたいのは山々なのだが、現金がないから株を売るしかない。税金を払うためにテスラ株を売るのはありだと思う?」

そして、この件の是非をツイッターの投票機能でユーザーたちに呼びかけたのだ。

結果、賛成多数となりマスクはテスラ株を売却したのだが、なぜ法案もまだ審議中で、含み益課税も実際に課せられていない段階(結局この法案はその後流れた)で、マスクはこのようなことをしたのか。
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文=重枝義樹

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