テクノロジー

2022.05.21 07:30

Web3に対する牽制か? ツイッター買収のイーロン・マスクがめざすアルゴリズム公開の真意

Photo by Ray Tamarra/GC Images


DAOがなぜ民主的なのか。それは、Web2.0におけるプラットフォーマーのような独裁的権力を持つ主体が存在しないからである。具体的には、予め定められたルールに従うことを合意した者だけが集まり、誰の恣意性も受け付けないルールのもと、意思決定やトランザクション(取引、コミュニケーション、執行、記録などの行為)が行われるからだ。
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予め定められたルールに合意した者だけが集まる組織(「コミュニティ」と言い変えても、「プラットフォーム」と言い換えても、「国」と言い換えても成り立つ)だから、恣意的な権力は存在しない。このような状態が実現した未来のウェブは、「Web3」とも言われているのだ。

イーロン・マスクに話を戻すが、実のところ、彼はWeb2.0的なプラットフォーマーであり続けたまま、アルゴリズムを公開することで、疑似Web3的な状況をつくり出そうとしていると言えなくはない。

とはいえ、仮にマスクの試みが成功したとしても、それはあくまで「疑似Web3」的な状況にとどまる。なぜなら、本当のWeb3的な世界では、彼のように極端に成功して、国家を凌駕するようなスーパーパワーを持った個人は影響力を行使できなくなるからだ。
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マスクはじめ、1990年代後半から始まったインターネット関連の起業で、歴史上類をみないほど短期間かつ絶大な富や権力を得てきた起業家たちにとっては、Web3は衰退の始まりにも見えるムーブメントなのだ。

Web3がうまく行く前に、その本来持っている価値を相対的に減少させることで、自己の優位性を維持しようとする動きの一環が、今回のマスクのアルゴリズム公開という発言には隠れているのではないだろうか。

マスクのツイッター買収に関しては、米国政府や金融資本からの横槍が入っているし、よしんば買収に成功したとしてもアルゴリズム公開も本当にやるかは今後の流れ次第なところではあるだろう。

しかし、Web2.0における既得権益層が、自らの権益基盤へWeb3を部分的に実装することで権益維持をはかるという動きは、今後もいろいろな形で出てくるのではないかと筆者は予測している。

連載:ポスト・トゥルース時代の真実を探して
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文=重枝義樹

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