Web3に対する牽制か? ツイッター買収のイーロン・マスクがめざすアルゴリズム公開の真意

Photo by Ray Tamarra/GC Images


独裁的権力を持たないWeb3


ところで、上記のメカニズムからブロックチェーンを連想する人たちもいるのではないだろうか。相互監視によって、不正が防止されるというシステムは、まさにブロックチェーン的だ。

ブロックチェーンはこれから世の中に広がっていくと言われているDAO(「ダオ」or「ディーエーオー」と読む)の基礎となる技術だ。DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは、直訳すると「脱中央集権化された自律的な組織」。筆者が重要だと思うニュアンスは、「脱中央集権化(Decentralized)」という部分だ。そして、そのように脱中央集権化されたインターネットは一般的に「Web3」と呼ばれている。

アルゴリズムの話にもどるが、プラットフォーマーはユーザーベネフィットを考えたアルゴリズムを運用していると言いつつも、やはりその恣意性については以前から批判されてきた。

結局、ブラックボックスであるから、なんでもプラットフォーマーに都合のよいことはできてしまう。例えば、自社の批判を潰すこともできるし、ユーザーを「いいね!」をもらうことや自己承認欲求を満たすことで「中毒」にさせ、プラットフォームに依存させて搾取することも、スポンサーへの利益誘導も可能だろう。

こういう話は、疑惑レベルの話から、内部告発者が実際に証言するというかなり具体的なものまで、数多く存在している。これはある種「Web3」の一世代前のインターネットの姿、つまり現在のウェブの中心的構造である「Web2.0」の負の側面とも言えるものだと筆者は解釈している。

「Web2.0」とは、2005年頃に流行した概念で、「プラットフォームとしてのウェブ」が次世代のウェブの姿だと予言したものだ。実際にその後、フェイスブックやツイッターなど巨大プラットフォーマーが次々に現れ、基本的に無料でユーザーにウェブ上のプラットフォームを提供し、相互のコミュニケーションを活発にし、情報の受発信を民主化してきた。

そのおかげで、かつてないほど筆者をはじめ私たちは自由を享受していると言えるのだが、一方でその自由の命綱は、私企業であるプラットフォーマーたちにがっちり握られているとも言える。

グーグル、ユーチューブ、インスタグラム、フェイスブック、アンドロイド、iPhone、そしてツイッターは、いまやなくてはならない公共インフラで、私たちの自由の源泉でもあるのだが、しかしこれらを政府のように投票で選ぶこともできなければ、影響力を及ばすだけの株もほとんどのユーザーは持ち合わせていない。

なくては生活もままならないほど依存しておきながら、それがいざ独裁化しても、それを止めるだけの力をどのユーザーも持っていないというような極めて危険な「中央集権」的状況にあるのがWeb2.0の実態なのだ。

実際、プラットフォーマーの恣意性を批判しているユーザーも、プラットフォーム自体から降りることはなかなかできないし、そのプラットフォーム内でプラットフォーマーを批判しているのが現況だ。

そんな非民主的な土台に成り立つ、危うい民主主義を、脱中央集権化することでアップデートしようと出てきたのがWeb3であり、その内容は例えばブロックチェーンであり、DAOなのである。
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文=重枝義樹

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