経済・社会

2022.06.15 10:00

世界と日本の再生可能エネルギー投資、求められる「大転換」とは


日本の風力発電のシェアは、まだ著しく小さい。陸上風力に関する許認可の制約により、風力発電の導入が遅れているためだ。しかし、日本北部の深海には特に洋上風力の大きなポテンシャルがある。

そこで新たに開発されたのが、水深の深い海域に設置可能な浮体式洋上風力発電技術である。今年初めに行われたスコットランドのオークションでは、17件のうち10件が浮体式洋上風力技術に基づくものだった。


浮体式洋上風力発電(Photo by Getty Images)

2020年12月に策定された日本の洋上風力発電ビジョンでは、2030年に10GW、2040年に30〜45GW規模の洋上風力の導入を目標としている。また、コスト目標は2030年から2035年にかけて8〜9円/kwhとなっている。発電した電力を需要地まで運ぶために、電力網の強化が不可欠である。さらに、長期的な目標として、浮体式風力を含む国内サプライチェーンの強化だ。

こうした再生可能エネルギーへの取り組みに加え、いわゆる「脱炭素化が難しい」セクターの脱炭素化戦略にももっと注目する必要がある。鉄鋼業、化学・石油化学、航空、海運などがこれにあたる。そこで注目されるのが、グリーン水素だ。

日本は、水素輸送の開発で世界をリードしており、火力発電所での水素燃料を最初に研究した国でもある。再生可能な電力で水の電気分解から製造されるグリーン水素のコストは現在、急速に低下している。

グリーン水素からグリーンアンモニア燃料を製造するプロジェクトは、世界中で数多く実施されている。鉄鋼業界も水素を利用した生産に移行しており、昨年スウェーデンで最初の納入が行われた。低炭素なアンモニアやメタノールの生産は活発化しており、現在、低炭素な水素供給のための規格や認証システムの開発を目指した取り組みが行われている。

また、持続可能なバイオマス原料の使用も大幅に増加する可能性がある。例えば、デンマークは昨年、バイオメタンの割合を全ガス供給量の4分の1にまで引き上げた。世界的には、航空用バイオ燃料の普及に向けた取り組みが重要であり、2025年までに25倍に増加させる予定だ。

結論として、日本が掲げる気候変動目標を達成するためには、より野心的なエネルギー政策が必要である。世界各国の先進的な取り組みは、エネルギー転換を加速させる方法を示唆している。日本でも、再生可能エネルギーには大きなポテンシャルがあり、特に太陽光と洋上風力は主な発電源になり得るだろう。

加えて、貿易に関連する脱炭素化の可能性にはさらなる焦点を当てる必要がある。具体的には、再生可能エネルギーで生産された低炭素な商品の輸入を増加させる構造的な政策が必要だ。このためには、現在ヨーロッパで確立されつつある炭素国境調整措置(CBAM)に類似した、低炭素な商品輸入のための基準と認証制度が必要である。また、高炭素産業に対する炭素価格の引き上げも必要だ。

気候政策の目標を達成するためには、このエネルギー転換を今すぐ加速させなければならない。早急に取り組むことで、経済的利益の最大化につながるだろう。


Dolf Gielen(ドルフ・ギーレン)◎2011年より国際再生可能エネルギー機関(IRENA)イノベーション・テクノロジーセンター(IITC)センター長。この分野におけるIRENAの分析、アドバイザリー業務、加盟国やステークホルダーとの対話を統括。オランダ・デルフト工科大学で博士号を取得。2000-2001年には国立環境研究所(つくば市)に客員研究員として勤務。

三ケ田麻美◎慶応義塾大学政策メディア研究科博士。エネルギーシステム分析を専門とし、世界各国のエネルギー長期計画策定支援に20年以上かかわる。2012年より上級プログラムオフィサーとして国際再生可能エネルギー機関イノベーション・テクノロジーセンター勤務。

文=ドルフ・ギーレン、三ヶ田麻美

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