経済・社会

2022.06.15 10:00

世界と日本の再生可能エネルギー投資、求められる「大転換」とは


2010年以降、太陽光発電、風力発電、バッテリーの価格は最大で85%低下し、2021年は、太陽光発電と風力発電の導入量が世界最高を記録した。しかし、今世紀半ばまでにネットゼロエミッションを達成するためには、2030年までの再生可能エネルギーの新規導入のペースを現在のペースの三倍まで拡大する必要がある。

再生可能エネルギーの急速な拡大は、産業、輸送、エネルギー、その他の分野に劇的な変化をもたらしており、エネルギー転換による脱炭素社会の実現に向けた大きな足掛かりとなるだろう。

日本の現状、課題と可能性


2020年10月、菅義偉元首相は2050年までに温室効果ガスのネットゼロを目指すと宣言し、日本政府は、産業構造の転換を図るため、同年12月に「グリーン成長戦略」を策定し、14の成長分野を設定した。現在、岸田首相のもと、「クリーンエネルギー戦略」の策定に向けて検討が行われている。

2011年の東日本大震災後、日本は54基の原子炉をすべて閉鎖し、必然的に輸入化石燃料への依存度を高めざるを得なくなった。世論からの強い風当たりと非常に複雑な法規制のために、現在は、わずか10基の原子炉が運転しているのみだ。

原子力発電の再稼働の遅れに対応するため、日本は2030年までに発電における再生可能エネルギー比率を36〜38%まで増加させることを目指しており、2030年以降は、再生可能エネルギーを主要な発電源とする方針だ。2020年度の再生可能エネルギーによる発電は約20%であり、ほぼ水力発電と太陽光発電によるものである。今後は再生可能エネルギーの多角化も必要となるだろう。

幸いなことに、日本でも再生可能エネルギーの拡大は大いに期待できる。太陽光発電の可能性はよく知られているが、主な課題は、発電された太陽光発電の電力を効率的に利用するために、十分な電力系統の柔軟性を確保することだ。出力調整可能な化石燃料発電の割合を減らすので、他の柔軟性を導入する必要がある。

例えば、電気自動車のバッテリーは電力システムの柔軟性を提供することができるが、そのためには戦略的にスマートチャージングを導入しなければならない。電気自動車は昼間に充電することで、太陽光発電をうまく利用することができる。また、ビーイクル・ツー・グリッド(V2G;Vehicle to Grid)という技術を利用することで、電気自動車の電力を家庭用エネルギーシステムの一部として使用することが可能だ。

現在、24カ国で約100件のV2G実証実験が行われ、この中で6400個の充電施設が使用されている。デンマークがその先導役だ。しかし、スマートチャージングの戦略には、充電用インフラと価格シグナルを適切に導入することが不可欠である。
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文=ドルフ・ギーレン、三ヶ田麻美

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