科学者たちによりまとめられたこの報告書は、エネルギーの「大転換」により、化石燃料への依存度が低い社会を作ることを求めている。1.5度の努力目標を達成するには、温室効果ガスの排出量が遅くともこの3年以内に減少に転じ、2030年までに43%削減され、今世紀中頃までに二酸化炭素の排出がネットゼロとなることが必要とされている。
また、温室効果ガス抑制に必要な投資は、2020年から30年までの年間平均が、現在の投資水準の「3~6倍」に増やす必要があるとされ、再生可能エネルギーへの大規模な支出が見込まれる。
化石燃料を取り巻く環境の変化
国際再生エネルギー機関(IRENA: International Renewable Energy Agency)は、3月29日に「世界エネルギー転換展望2022(IRENA World Energy Transitions Outlook 2022)」を発表した。その中で、1.5度目標への道筋として、電化とエネルギー効率が主要な推進力だとし、再生可能エネルギー、グリーン水素、持続可能な近代バイオエネルギーによって、すべての消費部門を脱炭素化することを提言している。
コロナからの回復とウクライナ危機が大きく影響し、エネルギーをめぐる地政学はここ数カ月で劇的に変化した。特に、当面の石油と天然ガスの供給について懸念されている。
化石燃料の価格は大幅に上昇し、北東アジア向け液化天然ガス(LNG)の4月の平均価格は、供給コストの約4倍にあたる38ドル/MMBtu(百万英国熱量単位)と推定されている。生産者と商社が大きな利益を上げる一方、消費者にとっては痛手だ。エネルギー価格の高騰は、経済競争力の脅威となっており、化石燃料価格の高騰と、その変動リスクは、再生可能エネルギーの経済的優位性を強固なものとする。