ビジネス

2022.05.09 07:30

アジア市場でNetflixを抜いた香港発のストリーミング「Viu」の戦略


米国の大手も苦戦するインド市場


JPモルガンのアナリストのAlvin Auは2月のレポートで「PCCWはViuの持続的な成長を促すためにオリジナルコンテンツへの投資を約束している」と述べた。しかし、オリジナルの制作にはコストがかかり、プラットフォームの成否を分ける可能性があると、フィッチ・レーティングスのニティン・ソニは指摘する。

「ネットフリックスは、コンテンツ制作に毎年数十億ドルを投じているが、インドではあまり成功していない。コンテンツを作り、それを非常に手頃な価格で提供することが重要だ」とソニは述べた。

ネットフリックスは、ヒット作「イカゲーム」をリリースした2021年に、韓国のコンテンツのみで5億ドルを投じると宣言した。一方、ディズニーはインドネシア市場に注力し、コンテンツの制作や購入に多額の資金を投じている。

Viuが対抗しなければならないのは、こうした資金力のあるグローバルな大手だけではない。2020年半ば、中国のテンセントは、東南アジアへの進出を強化するために、マレーシアを拠点とするIflixの資産を買収した。同じ年に、「韓国のアマゾン」と呼ばれるEコマースの企業のクーパン(Coupang)は、シンガポールの通信会社のSingtelとソニー・ピクチャーズ、ワーナー・ブラザーズらが設立したHooqの資産を買収した。

Viuはこれらの企業に対抗するために、制作スタジオのViu Original Studioを立ち上げ、年内に30以上のオリジナル作品を発表する予定で、それらは6カ国語で配信されるという。タイのTrueIDやインドネシアのVidioとも競合するViuは、現地のプロダクションに委託して300近い作品を制作した。

Viuのスタジオは今年1月、「オリジナルコンテンツの制作と地域のパートナーを通じた作品の調達をさらに強化する」と宣言した。新たなコンテンツには、タイの恋愛シリーズの「Close Friend」やインドネシアのファミリードラマ「Assalamualaikum My Future Husband」などの続編のほか、タイのミュージカル「Wannabe」や韓国のSFドラマ「Again My Life」などのオリジナル作品が含まれている。

一方で、リーは、この市場の現実を十分理解している。ボストン・コンサルティング・グループの昨年12月のレポートによると、ネットフリックスやアマゾン、ディズニーなどの大手は、インドの視聴者に米国の加入者が支払う金額よりも70%から90%安い価格でサービスを提供している。
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翻訳・編集=上田裕資

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