そして、春は、転属や転勤、転職の季節でもある。特に、転職においては、誰もが、元の職場への色々な思いを抱きながら、様々な希望や不安とともに、新たな職場へと移っていく。
かつて、筆者が、あるシンクタンクでマネジメントの立場にあったとき、中途採用のため、10年の間に数百人の人材と面接をした経験がある。
その経験の中で、採用させて頂いた人材の転職後の歩みを見ていて、一つ、深く感じたことがある。
それは、転職の面接で、前職での人間関係について不満や批判を述べる人は、多くの場合、残念なことに、新たな職場でも、同様の人間関係の問題に突き当たるということである。
逆に、転職面接で、前職での人間関係について、感謝の言葉を述べる人は、新たな職場でも、周りと良い関係を築き、活躍することが多い。
もとより、どこにも理想的な職場は無い。どの職場も、いずれ、何かの問題を抱えている。そして、人間であるかぎり、誰といえども、前の職場で、色々な人間関係での苦労や悩みはあったであろう。
されば、この二つのタイプの人の違いは、実は、前の職場で否定的な人間関係が有ったか無かったかではない。その職場で与えられた人間関係を肯定的に解釈する力を持っているか否かの違いであろう。
実際、後者の人は、面接で「前職で、人間関係で嫌なことは無かったですか」と水を向けても、「ええ、やはり色々なことがありましたが、そのお陰で、自分自身の至らぬ点にも気がつき、少しは成長することができました」といった答えを述べる。
一方、前者の人は、前職での色々な人間関係の問題が、すべて「自分以外の誰か」に原因があると解釈する傾向がある。そして、その「自分以外の誰か」という問題から逃げるようにして、転職を求めてやってくる。
そうした方々の姿を拝見していると、自分自身の経験も含め、昔から語られる警句を思い出す。