うつ病治療薬としてのキノコの幻覚成分に高まる期待 研究結果

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「キノコ」は今後、うつ病の新たな治療薬として使われるようになるだろうか──?医学誌ネイチャー メディシンに先ごろ掲載された論文によると、幻覚作用のあるキノコ(サイケデリック マッシュルーム)の活性成分「シロシビン(サイロシビン)」を投与したうつ病患者には、症状の改善だけでなく、脳の“グローバルな統合”がみられたという。

ここでの「グローバルな」統合とは、その人が「グローバリスト」であるかどうかとは無関係だ。脳内の調整がどれだけよく取れているか、機能的な接続性がどれだけ高いかということを示している。

私たちの脳は、すべての部分が一致して同じように動いているとき、よりよく機能する。ある部分がその他の部分と切り離された動きをするようになると、問題が起こる可能性が高まる。

「限定的」調査が示す効果


インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが発表したこの新たな論文は、うつ病の患者59人を対象に行った臨床試験の結果を分析したものだ。参加者は全員が、うつ病の標準的な治療への十分な反応が得られなかった「治療抵抗性うつ病」の人だ。

チームはまず、患者16人にシロシビン10mgを投与し、7日後に25mgを投与。最初の投与前と2回目の投与の翌日にfMRI(磁気共鳴機能画像法)で脳の活動を調べた。また、シロシビン投与の前と後に「ベック抑うつ尺度」を使った自己評価を行ってもらい、スコアの変化を確認した。

また、3週間をあけて、患者22人にシロシビン25mgを投与。さらに6週間にわたってプラセボを服用してもらった。ほか21人の患者には、同様に2回、シロシビン1mgを投与したほか、抗うつ薬エスシタロプラム(レクサプロ)10〜20mgを6週間服用してもらった。

これら2つのグループにはどちらも、試験開始前と3週間後にfMRI検査を受けてもらったほか、複数回にわたって「ベック抑うつ尺度」を使った自己評価を行ってもらい、スコアの変化を追跡した。

チームによると、これらの試験の結果、シロシビンが脳の機能の接続性と柔軟性をより高めていたことが確認できたという。シロシビンは、脳内のセロトニン5-HT2A受容体と結合し、気分や思考、記憶など多くの面に影響を与えると考えられている。
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編集=木内涼子

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