うつ病治療薬としてのキノコの幻覚成分に高まる期待 研究結果

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さらに、fMRIで撮影した脳の画像データの解析では、シロシビンの投与後、5-HT2A受容体の密度が高い脳の領域で接続性がさらに高まっていたことが確認できたという。

ただ、この研究結果だけで、幻覚キノコに飛びついてはいけない。かなり小規模な試験であること、そして今のところシロシビンがうつ病の治療薬として承認を得ていないことに、改めて留意する必要がある。さらに、研究において観察された効果が、どの程度にわたって持続するのかについても、明らかになっていない。

既存のうつ病の治療薬の多くにみられる大きな問題は、当初は効果があるように思えるものの、時間の経過とともに、その効果がどんどん薄れていくようにみえる場合があることだ。一方、シロシビンについては今後、短期的、長期的な副作用の可能性について、よりよく理解するための研究を行う必要がある。

今回の研究結果は、治療抵抗性うつ病と診断された人を対象に行われたものであり、結果がうつ病を経験しているすべての人に当てはまるわけではない可能性もある。

とはいえ、過去の研究結果からも、シロシビンがうつ病の治療に役立つ可能性があることは示されており、最新のこの論文は、そのことを示す証拠をさらに増やしたといえる。

市販されている抗うつ薬は、効果に大幅な制限があるという点で、問題が多いのかもしれない。そのことに気づいていながら、長い間見て見ぬふりが続けられているのかもしれない。今回の臨床試験が行われた背景には、そうした考えがある──つまり、より効果的で、副作用の少ない治療薬が求められていることは、間違いないということだ。

編集=木内涼子

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