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2022.04.28

富士急、東京ドームでも導入 パナソニックの「顔認証」技術を支える秘伝のタレ

Getty Images

「顔認証に触れる機会が多くなった」

 そう感じる方は増えているのではないだろうか。私自身が顔認証を活用していたのは、データセンターなどの限られた専門的施設においてだった。それが、いまや国際空港やスタジアム、行楽地など一般客が利用する施設でも導入が進み、一般化している印象だ。

パナソニックホールディングスでBtoBソリューション事業を手掛ける「パナソニックコネクト」では、さまざまな分野に普及していくと読み、2020年に310億円だった顔認証システム市場は2025年には2300億円に伸長すると試算している。

自身が顔認証システムを利用し、通関がスムーズになるなどメリットを享受していたため、過去と今とでどう変化したかたずねようと、したり顔でパナソニックに足を運んだ。

積み上げた65年の歴史


パナソニックコネクト、ビジネスデザイン部の古田邦夫部長に、私の利用していた顔認証について水を向けると「その当時の顔認証と現在では、どの社もまったく別物になっていると思われます」とずばりひと言。

古田氏は同社で、ソフトエンジニア、プロジェクトリーダーとして長きにわたり活躍し、30年以上新規事業創出に尽力してきた。

パナソニックコネクト 古田邦夫
古田邦夫氏(提供=パナソニック)

まずはパナソニックにおける顔認証の歴史について少し紐解いてもらった。現在でも光学カメラは同社の主流商品のひとつではあるが、セキュリティカメラを発表したのが1957年、65年前まで遡る。

この光学カメラの技術から画像センシング開発を始めたのが40年以上も前だ。1980年代に車のナンバーなどを読み取る技術に転用され、ちょうど30年前の1992年に顔認証技術開発に至った。

2000年代にはデジカメの「LUMIX」が登場。カメラ自体が人の顔を自動認証することで自動的に照準を合わせポートレートの撮影が可能になった。現在ではすっかり当たり前となったが、デビューした際には「これで家族写真の失敗がなくなる」と世のお父さんたちを密かに喜ばせる画期的な技術だった。

古田氏は「AIとディープラーニングによって顔認証の技術は、まったく異なる次元のシステムへと変貌を遂げています」という。

例えば、私が使用しているスマートフォン。このコロナ禍においてマスクをしたまま顔認証で起動させようとすると、まったく反応しない。また、外出が少ない昨今、無精髭が伸びても認証しないという欠点がある。少なくとも5G対応の製品ではあるのだが……。

ところが、現在のパナソニックの技術ではすでに、マスクの「あり/なし」をAIが自動判別できる。「なし」の場合は顔全体を俯瞰して認証、「あり」の場合は人として特徴的な目の周辺にフォーカスし、個人を特定する。さてその際、「目の周辺」というものの、いったいどれほどの箇所を参照することで、顔の特定に至るのか。
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文=松永裕司 編集=露原直人

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