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2022.04.28 17:00

富士急、東京ドームでも導入 パナソニックの「顔認証」技術を支える秘伝のタレ


昨年、さらにこの取り組みを富士山周辺で拡大。富士急行とナビタイムと協業し、公共交通機関などにも顔認証システムを導入、実証実験を実施した。

年間およそ3700万人が訪れる富士山エリアの観光客は、1人あたり平均して約1.3箇所の観光地に足を運んでいたが、この協業により3.4箇所に。この取り組みは、新型コロナ以降、「危機的状況を迎えた日本の観光産業全体を、エンパワーする」と古田氏も期待している。

病院など医療機関でも導入を進め、マイナンバーカードの読み取りと顔認証で本人確認を行う端末が8万台以上が採用されているという。米国国立標準技術研究所(NIST)の指標では、顔認証において世界最高水準の認証性能を達成しており、さらなる精度向上のため、現在はユーザーエクスペリエンス(UX)の向上に力点を置いている。

お年寄りや車いすの方などにも使いやすいハード設計を実現している。今後、さらにDXに注力する方針で、こうして収集したデータに対し、AI解析ツールも提供していき、マーケティングの可視化につなげる。

それでは今後、この顔認証の精度を100%に引き上げるのは可能なのか。

古田氏にたずねると「(100%に近い)現在の精度から100%を目指すには、コストなどの観点から見合わない労力になると思われます。よって現在の顔認証システムを広げつつ、すでにみなさんが使用されているモバイルIDを組み合わせ、『Hybrid-ID』として活用することで、より容易に、精度も100%に限りなく近づくことを目指しています」と今後の方向性を示した。

「顔認証は何よりも『なりすまし』を防ぐことができます。金融商品のような非常に機密度の高い商品や、メタバースのような仮想空間でも、その問題を防ぐことができるのではないでしょうか」

今後やって来るであろう技術革新の中においても、顔認証は汎用性が高いと期待をふくらませる。

パナソニックの顔認証技術
提供=パナソニック

東京ドームでもこの春から顔認証システムを導入。登録済みのユーザーはまさに「顔パス」で入場が可能となっている。クレジットカード情報との紐付けを済ませておけば、場内のいくつかの売店で顔認証により買い物もラクラク。

観客は手ぶらで各種体験を味わえ、そのデータが蓄積されることにより、AIでの解析・分析を経て、マーケティングとしての東京ドームへのフィードバックが可能となった。これにより、さらにUXの向上に繋がり、顧客満足度アップにつながる。

そこにはパナソニックが狙うサイバーフィジカルシステム(CPS)の具現化が待っている。CPSは、日常的に散らばるデータを、顔認証などのセンサーネットワークで収集し、AI・ディープラーニングを駆使して分析、そこで創出した情報の知識化によって、社会問題の解決を図っていくもの。

顔認証の活用により、我々の気づかぬうちに、社会はDX化されて行く。そんな時代が進んでいるのである。

文=松永裕司 編集=露原直人

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