「良い雰囲気」と「ルール」をつくるべき
では、私たちはどうすべきだったのか?
週次ビジネスレビューに進行役はいない。テーマごとに担当者が引き継ぐ流れだ。だとしても、職位が最も高い出席者は良い雰囲気を演出し、基本的なルールを設けるべきだ。
また、このグループの場合、その人物が会議の参加者を担当者と主な利害関係者に絞り、評価項目を厳選し、特に重要な指標にフォーカスすべきだった。
そして、参加者が互いを厳しく追及するのではなく、全員がその厳しい眼差しを会議の運営の問題に向けるべきだった。測定していた分野の多くでオペレーションが管理できておらず、秩序がない状態だということを全員が認識すべきだった。(中略)
また、このような新しいグループが週次ビジネスレビューを初めて実施するときに、混乱はつきもので、試行錯誤が必要だと心得ておくべきだった。そして、出席者が自分の過ちについて大らかに話せる空気をつくり、失敗を隠さず話すことを奨励し、ほかの出席者がそこから学べるようにすべきだった。
「威圧的な空気」はトラウマになる
こうした会議で重要なのは、高い水準を追求する緊張感と、過ちについて気楽に話せるリラックスした雰囲気を両立させることだ。
それがまったくできていなかったこの最悪な会議のことを、あるアマゾン社員は、15年以上たったいまでも覚えている。彼はこう振り返る。
必要なのは、自分たちを客観視して、みんなの前で事実をさらけ出し、「失敗した。間違っていた。問題はここにある」と言えるチームだ。
ところが、あるリーダーがこう言ったのを覚えている。
「こんなバカな判断をしたのはだれだ、だれのせいだ?」
ああいう発言の問題は、有無を言わさず有罪判決を下していることだ。
リーダーは攻撃せず、判断を差し控え、まずは実際に何が起きたのか理解するところから始めるべきだ。だれもが正しいことをしようとしているのだから。ビジネスを台無しにするつもりなどないし、顧客を憎んでいるわけでもない。自分たちが創造するものに強い責任も感じている。
その後、われわれは成長して、恐怖ではなく自由を土台とするようになった。素晴らしい行動や成果に報いるのは当然だが、失敗に対しても、チームが率直に自己批判を行えばそのことにも報いるようになった。チームが事実を覆い隠し、顧客体験に目を向けなかったら、そのとき初めて厳しく問い詰めるようになった。
この回想で注目すべき点は2つある。1つは、長い年月が経っても当事者の記憶が鮮明に残っていること。これは威圧的な経験がいつまでも消えない痕になることを物語っている。
もう1つは、このチームが失敗から学び、修正を重ね、最終的により良いプロセスを確立した点である。