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2022.11.02

アマゾン元参謀が回顧 「記憶に残るほどヒドい会議」

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アマゾンの最強の働き方──Working Backwards』は、アマゾンの経営中枢でCEOジェフ・ベゾスを支えてきた人物が、アマゾンの「経営・仕組み・働き方」について詳細に公開した初めての本だ。

アマゾンで「ジェフの影」と呼ばれるCEO付きの参謀を務めたコリン・ブライアーと、バイスプレジデント、ディレクター等を長年担ったビル・カーが、「アマゾンの働き方を個人や企業が導入する方法」を解き明かした同書より、会議の秘訣について語られた部分を紹介する。


記憶に残るほどひどい会議


週次ビジネスレビューを失敗させる落とし穴を見てみよう(注:週次ビジネスレビューとは、アマゾンで行われている、データを分析して実行に生かすための会議。詳細は本書参照)。

ある大きなソフトウェアグループの週次ビジネスレビューは、記憶に残るほどひどいものだった。グループを率いていたのは、いまはもうアマゾンを離れたあるシニアリーダーだった。

週次ビジネスレビューの重要な目的は学習すること、そして問題が起きれば責任を負い、解決することの2つだが、このグループの会議は大きなチャンスを逃し、参加者全員の多くの時間を無駄にしていた。

原因の1つは、出席者の数がどんどん膨れあがり、毎回全員が入れる大きな部屋を探さなくてはならなかったことだ。同様に、追跡すべき指標の数も増え続けた。ときには良い方向に進むこともあったが、たいていは逆効果だった。

ダメな会議の特徴:「ルール」がない


また、会議の雰囲気がおそろしく悪かった。基本的なルールや礼儀作法もなく、勝手な発言や攻撃が目立った。少しでも異常値が報告されるとだれもが殺気立ち、発表者を責めるような質問が相次いで、話は一向に進まなかった。何人もの出席者が、たいして言うべきこともないのに目立とうとしたり、だれかの機嫌を取るために口を挟もうとしたりした。

さらにたちが悪いのは、こうした長々とした脱線のなかには、時間稼ぎとしか思えないものもあったことだ。自分たちの担当事業がやり玉に挙げられないように、生産性のない会話を引き延ばそうという戦法だ。

そんな会議に参加するのは苦痛だった。「信頼を獲得する」というリーダーシップ・プリンシプルは、このような事態を防止する狙いもあって設けられた(注:リーダーシップ・プリンシンプルとは、アマゾン社員が肝に銘ずべき14の規範)。

「リーダーは注意深く耳を傾け、率直に話し、相手に対し敬意をもって接します。たとえ気まずい思いをすることがあっても間違いは素直に認め、自分やチームの間違いを正当化しません。リーダーは常に自らを最高水準と比較し、評価します」

ところが、このグループの会議は、この規範からよく逸脱した。

会議の本来の趣旨は、毎週ソフトウェアシステムを向上させていくことだった。だが会議は迷走した。原因を探るために緻密な質問をするはずの切れ者たちが、怒れる群衆と化すことさえあった。改善に取り組む担当者に襲いかかり、彼らから成功をめざす気力そのものを奪っていた。
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