ジャングルジムを進み、賢くリスクをとる
──あなたは、「起業家精神を持って生きるというのは、(ハシゴやエスカレーターではなく)『ジャングルジム』をいかに進んで行くかということ」と比喩で表現しています。そして「賢くリスクをとるスキルはとても大事」とも。具体的な考え方や行動のアイデアがあれば教えてください。
ホフマン:理想の成功するイメージとしては、例えば、プロダクト・マネジャーから始まって、プロダクト・ラインマネジャーになって、次にプロダクトマネジメント・ディレクターというふうに、順調に上へ昇っていくだけのハシゴやエスカレーターがあるかもしれない。
しかし、自分のレベルを上げていくためには、上へ昇る前にまず下へ降りなければならないこともある。あるいは水平な移動(異動)がよいこともある。(ハシゴやエスカレーターのように)上へ昇っていくだけではない。ジャングルジムとは、そういうことだ。
具体的に言うと、「あの企画に参加したい」と思ったら、あちこち移動(異動)してみるんだ。例えば、プロダクト・マネジャーから(やや畑違いの)エンジニアリング・マネジャーへ転向してみるとか。あるいは「この問題を解決するために、プロダクト・マネジャーとエンジニアリング・マネジャーを一緒にしてみよう」というふうに変化させてもいい。しかし、それを行うためにはリスクをとらなければならない。
例えば、「この仕事で自分が望んでいたスキルを身につけることができなかった。このスキルを身につけるためにはさらに1年か2年、余計に働かなければならないかもしれない」と考えたとする。
ほかの人にとってはリスクのある考えかもしれないけど、自分にとってはほんの小さなリスクだと思えば、自分が思った通りに仕事ができる。もしかしたら、そのリスクのおかげで、多くの人々が欲しがる製品やサービスが誕生するかもしれない。そうすれば、キャリアの向上にも結びつく。
いまの仕事の何かを諦めて、その代わりに別の革新的なビジネスチャンスを得ること。この考え方や行動が「ジャングルジム」であり、「賢くリスクをとる」ということだ。
──経営者および管理職側の立場で、社員に自律性をもった働き方をしてもらう際に、最適な方法とはどういうものですか?
ホフマン:さきほど、「賢くリスクをとる」ことの重要性を話したが、リスクを社員にとらせることで、社員に自律性をもった働き方をしてもらえるようになる。これがカギだ。
管理者がやってほしい通りに社員に企画を与えると、社員に自律性をもった働き方はしてもらえなくなる。つまり、社員がリスクをとれずに、社員は自主的に物事を考えて、力を発揮することができなくなる。
「このくらいのリスクはとってもよい」というパラメータを社員に与えればうまくいく。そのパラメータによって、社員はさまざまな試みを正しく行うことができるようになり、ある程度の自律性をもった働き方が可能になるのだ。
2022年2月24日、オンラインでインタビューに応じた。背景にはお気に入りのゴッホの絵がプリントされたつい立て。