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2022.04.25

国家主導で進む中国の「サステナブル消費」 日本企業はどう取り込むか

Getty Images

「SDGs」「持続可能性」が世界的なトレンドになり、Z世代(1995年から2009年に生まれた世代)を中心に、環境に配慮した商品やサービスを選択するなど消費行動に変化が見え始めた。

中国でも、「サステナブル消費」は、2022年のキーワードになりそうだ。これまで、現地で活動する企業は、年に数回ある巨大商戦での売り上げを指標にマーケティングを行ってきた。しかし2021年、ECプラットフォームの規制強化や分散化が進み、一度の売り上げではなく、LTV(顧客から生涯にわたって得られる利益)を重視する企業も出てきている。

今回は中国の消費市場における「サステナブル」の現況、そこから見える日本企業の商機について考えたい。

「ダブルイレブン」を機にマインドが変化


中国では2000年代、「持続可能な発展」が盛んに謳われた。ただ、現在とは意味合いが異なり、生産現場で排出される汚染排気や汚水などから環境を守るという限定的な意味で使用されていた。

2010年代の「PM2.5」による大気汚染の際には、一般市民の環境問題への関心も高まったが、あくまでも生産現場で起きた問題として認識され、改善するのも行政の仕事とされた。

つまり、これまでは環境問題に触れる機会があっても、地球環境保全への意識の高まりやそれにともなう消費行動には結びついていなかったのだ。

しかし、状況は2020年代に入り一変。象徴的だったのが、2021年11月11日に行われた中国最大の小売セール「ダブルイレブン」での出来事だ。

アリババが運営する、中国最大のプラットフォーム「天猫(Tmall)」では、毎年恒例の行事として11月10日の夜に大掛かりな前夜祭を実施し、カウントダウンで11月11日を迎え、日付が変わるとすぐに「ただ今の取引総額は〇〇億元!」といった情報を発信してセールを盛り上げてきた。

ところが、2021年はそうした「煽り」が姿を消し、変わって発信されたのは「低碳(ローカーボン)」「環境保護は大国の責務」「緑あふれる環境は未来へのギフト」といったキャッチコピー。

アリババの公式Weibo
アリババがSNSに画像を投稿し、「皆で一緒に地球に優しいグリーンな生活を」と呼びかけた(出所=アリババ社Weibo)

トレンドExpressでは、中国のSNS「Weibo(微博)」で、2019年から2021年のダブルイレブン期間における「ローカーボン」というキーワードで投稿されたクチコミ件数を分析した。

すると、昨年比14倍のクチコミボリュームになっていることがわかった。

背景には、2021年9月に習近平国家主席が「中国は2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウト、2060年までにカーボンニュートラルを実現」と宣言したことがある。
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文=濵野智成 編集=露原直人

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