中国では、政府の旗振りによってムーブメントが起こり、新たな市場や潮流が生まれるケースも多い。2021年のダブルイレブンでの出来事はまさに、政府の意向に沿って導き出されたものといえる。
環境保全を意識した消費の促進を打ち出したのは初めてで、サステナブル消費拡大にむけた下地が、中国市場にできあがったと言っても過言ではない。
「自分のための消費」が環境配慮に
「環境」と「消費」の結びつきはコスメ業界でその一端が現れてきている。その流れを表すのが、数年前から聞かれるようになった「Clean Beauty」だ。いま中国の消費者から注目され始めている。
欧米や日本においては「(その商品を使用しても)環境に無害」「商品開発時に動物実験をしていない」といった前提を置いたうえで、「肌への負担が少ない特長を持った化粧品」が「Clean Beauty」として認識される傾向がある。
一方、中国では「自分は敏感肌である」と認識する消費者が多いことから、「使用者の肌に無害・負担が少ない」という点が先に注目される。企業は「その根拠の1つとして、植物や自然由来の成分が使われている」と訴えるのだ。
植物由来の商品は、生産工程でも環境負荷が少ないことから、結果的に中国市場もサステナブルな消費に傾き始めていると言える。
まだ「環境のために」という意識で消費を行う傾向は弱いが、「Clean beauty」のように「自分にとって良い消費」が結果として「環境に配慮した消費」となっている事象が数多く生まれているのだ。
サステナブルを目的に啓発すると時間がかかるが、「個の実用性や利便性」をベースに訴えると、結果としてサステナブルの概念が広がるということがわかる。
中国ではSNSを中心に爆発的なスピードでトレンドが広がるので、2022年はサステナブル消費や意識が一層広がると予想される。
実際、ダブルイレブン商戦の直前に当たる2021年9~10月には投稿が伸びた。化粧品ブランド各社が、消費者から高い反響が見込める切り口と捉え、「Clean Beauty」に関するプロモーションを強化したことが影響したようだ。
「Clean Beauty」に関するWeiboクチコミ件数(トレンドExpress 調査)
では、日本企業が中国のサステナブル消費を取り込むためには、どうすれば良いか?
重要なのは、中国消費者の意識の解像度を上げて、刺さるポイントを見つけることだ。
例としては、中国では海洋問題への意識が強いため、それをブランディングの切り口にする、あるいはサステナブル意識の高い都市部のZ世代に刺さる商品コンセプトを企画するといったことが挙げられる。
Z世代ユーザーが多いとされる「抖音」、「bilibili(ビリビリ)」といったメディアのチェックは必須だ。
内容については、もちろん伝わりやすさの追求が必要だ。しかしそれ以上に、多様な価値観を持ち、飽きやすい中国の消費者に向けては、「渾身の1作品」を仕上げるよりも「(一定のクオリティ担保を前提に)スピーディに展開してPDCAをまわす」ことで、ユーザー獲得の成功確率は高まるだろう。