4人揃って踊りながら、さらに進んで行くと、一瞬、映像はストップモーションとなり、氷の塊も中空に止まる。そのうちの1つを女性が拳で打ち砕くと、世界は再び動き出し、通りは海岸に出る。
踊る男性の1人が上半身裸になって海へと飛び込む。降り注ぐ氷の塊のなか、ゆったりと気持ちよさそうに海に浮かぶ男性。そこに「BURBERRY」の文字が表示されて動画は終わる。なんだか不思議で、相当にイマっぽく、妙にカッコイイ。
この動画は、制作側の説明によれば、2020年から続くコロナ禍のなか、コミュニティやお互いを助け合うことや、一緒にいることの素晴らしさ(celebration of togetherness)を表現したものだということだ。
そのように見てみると、空から落ちてくる氷の塊はコロナ禍で、それを意に介さず、楽しそうに踊りながら通りを進む4人の男女の姿は、困難な時期にあっても一緒にいることの素晴らしさを表現しているのだと理解できる。
この動画とともにバーバリーは、創設者のトーマス・バーバリーが21歳の時に会社を興したことにちなみ、世界各地で若者の支援に取り組む慈善団体に寄付を行うなど、明日の世界を担う世代をサポートしているのだという。
ただただ不思議にお洒落な動画かと思いきや、コロナ禍での孤独や分断に負けずに、日々の暮らしを喜び、ポジティブな面を探し続け、未来への純粋な希望が描かれているのだ。
また、氷の塊が降り注ぐなか、海で寛ぐという最後のシーンは、人生のツライ要素(この場合は多くコロナ禍が想定されている)でさえも、それを通して学び成長するために、歓迎しようというメッセージも込められているということだ。
筆者はこの動画を最初に何度も観て、ひと言で言えば「強烈にカッコイイ動画を老舗ブランドが創ってきた」と捉えていたが、その制作意図を知ることで、そこに込められたメッセージをさらに深く理解することができた。
老舗ブランドが自らのアイデンティティと向き合いながら、最も新しい描き方で、それを追求している素晴らしい事例だと言えるだろう。
連載:先進事例に学ぶ広告コミュニケーションのいま
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