ウクライナ侵攻で深刻化する世界の飢餓、世界各国はどう対応する

Photo by Joe Raedle / Getty Images

2022年には、ヨーロッパとアジアに加え、アフリカや中東も含めた数千万の人々が飢えに苦しむことになりそうだ。すでにさまざまな悪条件が重なっていたところに、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が始めたウクライナでの侵略戦争により、事態はさらに大きく悪化した。

ロシアとウクライナは、合わせて世界の小麦生産の3分の1近くを占めている。両国の戦争が始まってから10日後の3月3日までに、世界の小麦価格は21%上昇した。

北米での慢性的な干ばつなどの異常気象、燃料価格の高騰、天井知らずの肥料価格の上昇、戦争と気候変動が原因で増え続ける避難民と、彼らが必要とする食糧需要の増大によって、2022年の世界は飢餓の拡大に直面するだろう。

短期的解決策は見当たらない。過去1200年で最悪とも言われる干ばつに見舞われる米国の農家が、食糧不足を解消してくれることは期待できない。世界最大の肥料製造会社である加ニュートリエン(Nutrien)は、20%の生産拡大を発表したが、価格は高止まりしており、世界の農業従事者の多くは依然として手が届かないだろう。

世界が慢性的な飢餓を抜け出す長期的解決策として、作物と食料生産地の多角化が考えられる。有機農法の成長はかすかな希望といえるが、それでもまだ、米国の農地作付面積の1%にも満たない。

そして、極度の空腹や餓死の危険にさらされる人々に、どうやって食糧を届けるかという問題もある。ウクライナでの戦争が始まる前から、史上最多である2600万人の難民が、食糧供給に関して援助団体や政府機関のネットワークに頼っている状態だった。

国連の食糧援助機関、世界食糧計画(WFP)は、ウクライナ侵攻だけで同機関の運営コストが月7100万ドル上昇すると予想している。WFPはすでに、やむを得ずイエメンへの食糧配給を削減した。飢餓に見舞われるイエメンでは、1600万人以上が食糧不安を抱えており、「地域によっては飢饉に近い状態にある」という。
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翻訳=的場知之/ガリレオ

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