シングルスレッドとは、一度に一つのコマンドを処理することを意味するコンピューター科学用語だ。この管理モデルを特に強く順守していることで有名なのはアマゾンのリーダーだが、この手法は多くの企業で採用されている。
「プロジェクトを大失敗させるには、それを誰かのパートタイムの仕事にするのが最善だ」という警告を聞いたことがあるかもしれない。シングルスレッドのリーダーシップは、大きな商品やプロジェクト、取り組みに専任の責任者を当てることで、この問題を解決するものだ。
このアプローチは効果的だが、従業員が在宅勤務をしている場合はデメリットもあるかもしれない。シングルスレッドのリーダーには多くの圧力や責任がかかり、プロジェクトの責任が自分の肩のみにかかっていると感じてしまいがちだ。
オフィスを出て自宅に戻り、充電し、翌日仕事に戻ったときに責任をまた背負い直すことができれば、それでも問題はない。しかし、筆者のコンサルティング企業リーダーシップIQの調査「The State Of Working From Home(在宅勤務の状況)」から分かっているように、在宅勤務の場合は仕事から離れられず苦労する人がいる。
3分の1近くの人が、在宅勤務の場合はワークライフバランスが悪化すると答えていた。多くの人は仕事の質や生産性が上がったとしていたが、その一方で勤務時間の増加や、仕事から精神的に離れられないなどの代償があった。
ティム・ホールニは、人工知能(AI)により拡張した顧客サポートのアウトソーシング企業ヒューマシュ(Humach)の最高経営責任者(CEO)だ。急速に成長を遂げる会社の経営になじみがあるホールニは、シングルスレッドのリーダーシップや強い説明責任を持つことなど、あらゆることについて経験を積んでいた。
それでも、新型コロナウイルス感染症の流行により同社の1800人近くの従業員が在宅勤務を余儀なくされたとき、ホールニは素早く問題を発見した。
彼は先日、筆者に対し次のように語った。
「多くの企業と同様、当社は夜遅くや朝、週末にも働き、自慢はしないが変化をもたらし仕事を片付けてくれることを目印として、志高い積極的な人材を見つけることができた。急速に成長を遂げる企業はどこもそうであるように、私たちも期待をはるかに超える仕事をするこうした人材を重宝している。
「しかし、コンピューターがいつも隣にあり自宅から非常に多くのことができる状況では、ワークライフバランスの達成はいっそう難しい。バランスや充電の時間がなければ、燃え尽き症候群が起きる可能性は極めて現実的なものとなる」