世界をよりよくするための社会的インパクトとリターンの双方を狙う。野心的な目標を立て、実現させるまれな手腕をもつ久能だが、自身の活動について特に「フィランソロピスト」として意識したことはないという。
「マネジメントの対象がFor profitかNonprofitの違いだけで、やることに変わりありません。元々、医薬品という社会的側面が強い事業が出発点であったこともあるかもしれません。また、フィランソロピーは語源をたどると、『Phil-Anthropy(人類を愛する)』。対してフィロソフィーは『Phil-Sophia(知恵を愛する)』。若いころは自身の理念や考えを実現させたいという熱意がある。しかし経験や年を経るに従って『人間』を愛する方向に移るのは、自然なことではないでしょうか」
自身の成功には、運よく、多くの支えがあった。しかし、才能があり、努力をしても機会に恵まれない人たちは多くいる。前世代から受けた「恩」を次世代に返していく「恩送り」が久能の信条だ。
「資産には限りがあり、社会課題のすべてが解決するわけではありません。悩み、思考錯誤をしながらやっていくものだと思います。『人間を愛する』ということはどういうことか。それを学ぶことによって、ビジネスとは異なる観点から成長できるのだと思います」