ビジネス

2022.03.26 11:30

寄付に依存せずビジネスで稼ぐ! 株式会社&NPO「ハイブリッド」への挑戦

特定非営利活動法人 あなたのいばしょ 大空幸星

発売中の「Forbes JAPAN」2022年5月号の特集「これからの『お金の使い方』」では、コロナ禍に大きな社会的役割を果たしたビル&メリンダ・ゲイツ財団、チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブをはじめとした、世界および日本の起業家たちがはじめている「新しいフィランソロピー」の動きを取り上げる。そして、社会課題解決を革新的な手法で行う非営利セクターの動きとともに、「新しい社会のつくりかた」の進化を見ていく。

政策提言から孤独・孤立対策担当大臣の設置に成功した気鋭のNPO「あなたのいばしょ」。非営利での活動を続けながら、株式会社を創業するという。その狙いは。


死にたい、つらい、悲しい──匿名の悩みや不安の相談にオンラインで無料対応する「あなたのいばしょチャット相談」。24時間365日、国内外のボランティア相談員500人体制で、24万件以上の相談に寄り添ってきたチャット形式の相談窓口は、電話よりSNSになじみのある若い世代の新たなセーフティネットだ。

この相談窓口を運営するNPO法人あなたのいばしょは、望まれない孤独の解消を目指し、創業1年目から積極的に政策提言を実施してきた。2020年12月、政府に孤独対策の提言をすると、翌月には早くも孤独対策の議員勉強会が立ち上がり、21年2月に孤独・孤立対策担当室が内閣官房に設置された。NPOの政策提言が起点となり、日本に孤独・孤立対策担当大臣が誕生したのだ。理事長の大空幸星は「『政策的なIPO』は成し遂げた」とその手応えを語る。

行政と連携して無料の相談窓口を運営しつつ、そこで得た現場の声を提言と政策化を通して国の仕組みに反映させていく──社会的インパクト創出を目指す「非営利のお手本」ともいうべき活動を展開する大空だが、22年度内にはビジネス領域に参入する。メンタルヘルス・テック領域で株式会社を創業予定。その利益を株主に還元する代わりに、現在のNPO事業に投入する「2in1のハイブリッド組織」構想だ。

背景には、「このままではセーフティネットなき社会が到来する」という危機感がある。

自殺相談のような仕組みは社会のセーフティネットであり、相談者から利用料金を徴収できない。受益者負担が成り立たず、ビジネスの原理では解決できないため、非営利セクターが担わなければいけない分野だ。
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文=フォーブスジャパン編集部 写真=小田駿一

この記事は 「Forbes JAPAN No.093 2022年月5号(2022/3/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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