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2022.03.12 17:00

懐かしのRPG風味のメタバース「Gather Town」で大注目の20代起業家

(c)Gather

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2020年後半のある日、ベンチャー投資家との面談を控えたフィリップ・ワン(Phillip Wang)は、彼らをオフィスのビルの屋上に招待しようと考えていた。ピンクやオレンジ色の雲の下にある、ネオングリーンの光に照らされたその空間は、創業6カ月の彼のスタートアップを売り込むための絶好の場所かもしれない──。
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彼が何よりも、投資家たちに自慢したいのが家賃の安さだった。その当時社員数25名だったった「Gather(ギャザー)」は、ビル1棟をたったの175ドルで借りていたが、それは彼らのオフィスがバーチャル空間にあるからだった。

新型コロナウイルスの影響で多くの人々がオフィスに戻るのを躊躇している今、Gatherが運営する「Gather Town(ギャザー・タウン)」のサイトには連日10万人もの人々がログインし、バーチャルな会議やパーティー、ロックコンサートなどに参加している。

「メタバースというと、多くの人は5〜7年先のSFのようなイメージを持っていて、ディストピア的な世界を想像していたりする」と、ワンは3倍速の早口で話す。
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しかし、23歳の彼にとって、メタバースはすでにここにある、フレンドリーなムードに満ちたものだ。Gatherの仮想空間は、洗練された別世界というよりは、解像度が粗い、20年前のRPGゲームのようなノスタルジックな雰囲気を醸し出している。

パンデミックの初期に4人の大学を出たばかりの若者たち(全員がまだ26歳以下)が設立したスタートアップは、社員数75人に急拡大を遂げ、昨年11月に評価額7億ドルで7700万ドル(約90億円)を調達した。

Gatherは売上高を明かしていないが、フォーブスは設立1年目の同社の昨年の売上が1000万ドルを突破したと試算している。

数学の天才が起業家に


Gatherの仮想空間のルーツは、同社のCEOを務めるワンがシアトル郊外で過ごした10代の頃にさかのぼる。彼は、マインクラフトなどの質素なグラフィックのゲームに没頭すると同時に、コンピュータと数学に夢中になった。高校2年のときに、7万人が参加したジュニア数学オリンピックでトップ200に入った彼は、3年生になるとマイクロソフトでマシンラーニングの仕事に就き、カーネギーメロン大学に進むと飛び級で3年間で卒業した。

そして、大学の同級生のクメイル・ジャファー(Kumail Jaffer)とサイラス・タブリジ(Cyrus Tabrizi)とともに、2019年に名門インキュベーターのYコンビネータに合格し、人々のつながりを促進するハードウェアを作ろうとした。しかし、彼らはビジネスには関心がなく、投資家たちにピッチを行う「デモデイ」をさぼることすらあったという。

「色んなことをすべてやるように言われたけど、結局僕らには向いていないことに気づいたんです」とワンは言う。
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翻訳・編集=上田裕資

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