ビジネス

2022.03.11

仮想通貨の育ての親に聞く、ジャック・ドーシーと組んだ理由

「Blockstream」創業者のアダム・バック(中央)



インターネットがなくてもビットコインのトランザクションを共有できるブロックストリームの衛星配信サービス。世界のどこにいても利用できるため、ネット接続が容易ではない途上国からの利用者が増えることが期待されている。ブロックストリームはこの他にも、米フィンテック企業スクエアや、投資会社アーク・インベストメントと一緒に太陽光発電によるマイニング施設の建設を発表するなど、テクノロジーを最大限活用した野心的なプロジェクトを次々と立ち上げている。

──衛星配信事業「ブロックストリーム・サテライト」を立ち上げた理由は。

理由は2つ。1点目は、途上国の住民がビットコイン・ネットワークに参加できるようにするため。途上国を中心に、参加できない消費者は多い。インフレ率が高く、銀行口座を開くのが容易ではない貧困国の住民ほど国際送金の需要もあるが、そういった国は総じてインターネット環境が悪い。しかも、インターネット接続料が高額だ。参入障壁を下げたかった。

2点目は、ビジネスユースを想定してのこと。海底ケーブルは事故や故障に弱く、ネット接続が途絶えると、ビットコインは影響を受けてしまう。衛星配信なら、常時世界中で利用できる。万一、ネットワーク障害が起きた場合、早期にハッキングの可能性を疑うこともできる。ビジネスにとっても安心なはずだ。

──キャシー・ウッド率いる投資会社アーク・インベストメント、ジャック・ドーシーのフィンテック企業スクエアと3社で、オープンソースの太陽光発電型マイニング施設の建設を発表している。

再生可能エネルギーを使えば安価で透明性の高いビットコイン採掘を実現できる。その実証実験の過程で得られる知見を共有したかった。我々は技術的な観点から、アークは金融モデルを使った投資分析の観点から同じ結論に辿り着いていた。そこで、スクエアと3社で取り組むことにした。再生可能エネルギーで採掘に必要な電力を安定的に供給するのが目的。電力は家庭や工場がある生活圏内で消費されるが、ビットコインの採掘は山奥でも可能だ。衛星配信や太陽光発電といったテクノロジーで、ビットコインやブロックチェーンはさらに進化できる。




ブロックストリーム◎2014年創業、カナダの暗号資産インフラ開発企業。共同創業者兼CEOはアダム・バック。衛星事業や再生可能エネルギーを利用したマイニング(採掘)インフラの開発を手がけている。21年8月、シリーズBラウンドで2.1億ドルの資金調達を実施。評価額32億ドルで”ユニコーン”の仲間入りを果たしている。

インタビュー=井関庸介

この記事は 「Forbes JAPAN No.090 2022年2月号(2021/12/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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