シュピーゲル教授によると、ウクライナの紛争地域やその周辺からは、すでに避難した医師たちもいる。また、感染者の治療に必要な酸素は、以前から不足していた。
教授は、「そもそも集中治療室の数が限られている中で、外傷で運び込まれる患者が急増するだろう。つまり、感染者の治療は大幅に妨げられることになると考えられる」と語る。
また、赤十字国際委員会(ICRC)ウクライナ代表部のフローレンス・ジレット首席代表は声明を発表、次のように訴えている。
「ICRCはすべての当事者に対し、人々の生存に不可欠なインフラを標的としないこと、戦時国際法で掲げられる区別の原則(民間人と戦闘員を区別する)、比例性の原理(不必要な負傷や犠牲を最低限に抑える)、予防の原則(民間の被害を最小限にとどめるために実行しうるすべての予防措置を取る)を守ることを求める」
だが、これはほとんど意味をなさない警告かもしれない。病院がロシア軍の砲撃を受けたことが、すでに伝えられている。ウクライナのドミトロ・クレバ外相はツイッターで、ロシアの攻撃をこう非難している。
「プーチンはいまだパンデミックが猛威を振るう欧州で、大規模な侵略戦争を開始した。ロシアはその上、ウクライナの病院を爆撃している。これは、悪を超えている」
シュピーゲル教授は、戦闘が長引けば、医療インフラの崩壊は避けられないだろうと警告する。戦闘が激化すれば、新型コロナウイルスを含めたすべての病気への対応が、困難になる。
イエメンやアフガニスタンなど、パンデミックのなかで紛争が続くその他の地域も訪れてきた教授は、これらの地域では、感染症との闘いは「重要視されなくなる」と述べている。