CxO(シーエックスオー)は、トップであるCEOを組織の要として支えるスペシャリストたち。CCO、CFO、CIO、CLO、CMO、COO、CSO、CTO……こうした役職に必要な能力と条件、その立場から得られる知見とは? ローソンとファミリーマートのデジタル戦略を担った「コンビニの改革者」の植野大輔が、注目の人物にインタビューするシリーズ。
Vol.5 北川拓也 楽天 常務執行役員 テクノロジーサービスディビジョンCDO
植野:北川さんの「CDO」という肩書はChief Data Officer(最高データ責任者)。データで経営をドリブンするという意味ですよね。
北川:AIとデータの責任者としてまずやっている仕事は、70以上のサービスデータを集め、グループ全体で使えるかたちに整える役割です。
植野:DMP
(※1)みたいなプラットフォームをちゃんとつくるということですね。
※1 DMP(Data Management Platform):インターネットを介して収集された多種多様なデータを蓄積・管理するプラットフォーム。購買や行動履歴、属性などのユーザー情報を解析して、ターゲティングやパーソナライズに生かせる。北川:そうです。楽天はメンバーシップカンパニーになるという命題があるのでマーケティング系のプロダクトが多いのですが、データプラットフォームをもとに全社で使えるAIプロダクトもつくります。
データとAIプロダクトを使って各事業や外に対してコンサルティングサービスを提供するほか、R&D部門である楽天技術研究所も運営しています。
植野:具体的なサービスにつながる役割では?
北川:わかりやすいのは、何を買ったか、在庫需要はどうかというEコマース商品の裏側のデータをまとめた「商品カタログ」づくりです。それがないとシステムが回りません。楽天モバイルのショップをどの立地にオープンするかもAIで決めたりします。
植野:これから目指したいサービスはありますか。
北川:メーカーさんやブランドさんと一緒に商品開発を進めたいですね。例えば、楽天の検索データを使うと、どんな需要があるか、お客さんがどんな問題を抱えているかが結構わかります。
例えば「パンプス 疲れない」といった単語でよく検索されています。なぜかと言うと、疲れないパンプスを代表するブランドがないからです。つまり、ブランドってお客さんにとってのソリューションなんです。ソリューションが見つからないものに関しては、そのままペイン
(※2)が検索されるのです。
※2 ペイン:顧客が解決したいと願っている自身の課題のことで「あると嫌なもの」。反対に、欲しいと思っている「あったらよいもの」をゲイン(Gain)と呼ぶ。どちらも消費やサービスで顧客のニーズを満たす提供価値となる。植野:ブランド名になっていないペインを探せば商品開発ができる。
北川:まさに。そのペインは世の中に大量にあります。
植野:マーケターたちが参考にする「Googleトレンド」と比べてどうです?
北川:楽天は商品にひも付いた検索なので、より精度が高いはずです。今年どんな色が流行っているか、みたいなこともわかります。
そんな当たり前なことすら、データを定量的に見たことがない人がほとんどです。Eコマースが出て20年たったのに、なぜメーカーやブランドさんにそうしたデータが行き渡っていないのか。実はきちんとした理由があって、自然言語を処理するのがこれまではすごく大変だったから。これをしっかりやって、世の中のペインをメーカーさんやブランドさん、もしくは店舗さんと一緒に解決する仕組みをつくるのが、これから僕のやりたいことです。