予測4:新たなタイプの仕事と働き方が普及する
22年はWeb 3.0の動きによって新たな仕事や働き方が認識され、普及するようになるだろう。先述のDAOは、テックサビーな(テクノロジーに精通した)若者にとって、新たな就職先となりつつある。自分が共感するテーマを扱っているDAOに参加して、自律分散型組織で仕事をこなし、そのDAOのトークンで報酬を受け取ることができる。複数のDAOに貢献することも可能だ。これまでのピラミッド型の伝統的組織に就職してキャリアを築くのではなく、自律分散型組織で自分が貢献できることに集中して、貢献に応じた報酬を得ることができるモデルだ。シリコンバレーではGAFAなどのWeb 2.0企業からWeb 3.0への転職、というのが最新テックトレンドに敏感な若者の間で一つのテーマとなりつつある。
また、メタバースの中でトークンを中心とした経済圏が生まれることによってそこに新しい仕事が形成されるようになってきている。例えば、メタバースの中で不動産ブローカーとしてバーチャルな土地(NFTとして取引される)の売買を斡旋する人たち、メタバース内で使われるアバターのファッションデザイナーや洋服屋などといった今までにはなかった新しい仕事がデジタル世界で生まれているのだ。またAxie InfinityなどのPlay-to-Earn型のWeb 3.0型ゲームで遊ぶことで所得を稼ぐ人口も引き続き増えていくだろう。今後、自分の所得のほとんどを、現実社会よりもメタバースで稼ぐ人たちが多くなっていくはずだ。
予測5:DeFiが成熟化し、DeFi2.0が本格化する
20年の夏にDeFi(分散型金融)が大きく発展を遂げ、当時「DeFiの夏(DeFi Summer)」と呼ばれた。当時はCompoundやAaveなどの第一世代とも言えるDeFiプロジェクトが注目を集めた。その躍進の大きな理由としては、ガバナンストークン配布によるユーザーへのインセンティブ(動機付け)が大きかった。これによってDeFiに多額の資金が流入した。
しかし21年から、これらの第一世代のいわばインセンティブのばらまきとも言えるやり方よりも、より効率的なDeFi経済を作るための様々な試行錯誤が行われてきている。例えば、分散型取引所(DEX)において、流動性をユーザーから「借りる」のではなく、プロトコル自体が流動性を「保有する」仕組みを導入するプロジェクトなどが注目されている。22年にはこのトレンドに拍車がかかり、DeFiにおけるインセンティブモデルやトークン経済の見直しが行われ、いわゆる「DeFi 2.0」が加速化していくだろう。その中で、効率的なトークン経済モデルを設計できるエコノミストの需要が高まっていくだろう。
また、ここ最近DeFiプロジェクトのハッキング問題がちらほら起きているが、今年も大きなハッキング問題が起こるかもしれない。それに対してセキュリティの改善に対する注力が増していくだろう。これもDeFiの成熟化の過程の中で、なくてはならないステップとなるだろう。
連載:米国発、次世代金融動向を読み解く
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