さらに、「Web 3.0」が新たな潮流としてキーワードとなり、Web 3.0関連の多数のプロジェクトがローンチされ、関連トークンは高値を更新した。一部の国では暗号資産の規制フレームワークが明確になりつつあるなか、米国においては今も規制のあり方が混沌としている。その一方で、クリプト関連スタートアップ及びプロジェクトへの資金流入と人材流入は勢いを増すばかりで、数多くのユニコーン企業が誕生した。業界にとって激動の一年であったが、その中で、着実にクリプトがメインストリーム化してきていることは誰の目にも明らかだ。
では22年、クリプト業界では何が起きるのだろうか? このような日々刻々と変化するダイナミックな業界では1カ月先のことでも予測することは難しいが、今、芽が出始めている兆候をヒントに、今後1年の動きを予測してみたい。
予測1:Web 3.0が国家戦略として論じられる
Web 3.0という言葉が定着しはじめた1年だった。Web 3.0とはブロックチェーン技術を基盤とした分散型取引が可能にする次世代ウェブのことだが、くわしくは筆者が書いた『ブロックチェーンが実現する次世代の「ウェブ3.0」とは何か』を参考いただきたい。
これまで使われてきたブロックチェーンや暗号資産という言葉では技術的な印象を与えてしまったり、これらの技術が可能とする世界観を上手く言い表せなかったりするもどかしさがあった。それをWeb 3.0という言葉で、ウェブの発展段階の延長として表現したことで、ブロックチェーン業界という枠を超えた、テクノロジー業界全体に影響を与える、より壮大なコンセプトとして幅広く受け入れられるようになってきた。
米国では、シリコンバレーの著名ベンチャー・キャピタルもこぞって投資をする対象になってきた。それとともに、かつて初期のインターネットがたどったように、新しい技術とパラダイムであるWeb 3.0においても、いかにイノベーションを促進する規制フレームワークを作るかが今後のWeb 3.0の成功を左右するという認識が広まってきている。
米国は1990年代半ばに、商用インターネットとそのユースケースの可能性にいち早く目をつけ、国家レベルで戦略的に取り組んできた結果、その後の30年間近くの優位性を手に入れた。そのため、これらの投資家や起業家は議会に対していかにWeb 3.0が今後の国家競争性を左右するもので、国家戦略として真剣に取り組まなければならないかを論じ始めている。22年はこの流れが更に強くなり、米国だけではなく、他の国でもWeb 3.0を国家戦略として論じ始めるのではないか。
図1:2021年12月に開催されたクリプト企業CEOの議会公聴会ではWeb 3.0という言葉が何度も発せられた(出典:Getty Images)