多くの人を巻き込み、産業全体、さらには都市までもを循環型に変える人気音楽フェスティバル「DGTL」とは一体どのようなものなのだろうか。
以下、ミッチェルさんの回答である。
家で寝転んで映画を見るよりも環境負荷が低い
現在の経済は、継続的な経済成長を目指すリニアな仕組みの上に成り立っています。製品が生産され、利用され、最後には廃棄される「使い捨て」の社会だということです。しかし、DGTLでは「ごみ」は存在しないと考え、循環型の仕組みを採用したサーキュラー音楽フェスティバルへの移行を実現するために取り組んできました。環境負荷をなくし、廃棄物をなくすために、すべての廃棄物を価値ある資源に変換して循環させる新しいフェスティバル運営を模索してきたのです。
そもそもの始まりは、2人の友人が、ふたつのイベントのコンセプトをかけ合わせて音楽フェスティバルを作ろうと思ったことでした。ひとつは、才能ある著名DJと地元DJをつなぎエンパワーするための音楽フェスティバル、もうひとつは、ニッチな分野の音楽を中心とした、アートとサステナビリティに重きをおいた音楽フェスティバルです。
さらに、音楽フェスティバル自体が非常に大きな環境負荷と廃棄を生み出すことを知っていた彼らは、「サーキュラーエコノミーを進める都市のリビングラボとしての音楽フェスティバル」を作ってみようと考え、サステナブルなイベント運営に取り組んできたのです。以降、音楽フェスティバルが持つ大きな負のインパクトを、ポジティブなインパクトに変えるにはどうしたらいいのか考え続けてきました。アムステルダム市の掲げるモットーと同じように、ずっと「learning by doing(やりながら学ぶ)」を続けてきたと言えます。
実際に、家で寝転んで映画を見ているよりもDGTLに参加する方が環境負荷が低いのです。胸を張って、ぜひ参加してくださいとお伝えすることができます。
DGTL 2019開催時の様子(YouTube)
サーキュラー音楽フェスティバルを実現するための第一歩として、まず初めに私たちが着手したのは、資源と廃棄物の流れの測定と可視化です。これにより、どこに一番で大きな環境負荷が発生しているかが一目瞭然になります。サステナブルなイベント運営を実現するためにDGTLが注力すべき分野を特定し、対応の優先順位をつけることができます。
DGTLフェスティバルにおける資源の流れを分析したマテリアル・フロー・アナリシス/Image via DGTL
問題のある分野がわかったら、そこを改善していけばいいのでそこからはあっという間でした。例えば、あるサプライヤーやケータリング会社が、環境負荷の大きなものをフェスティバルに運び込んでいる、もしくは私たちが処理できない素材を使っている、ということがわかったとします。これがわかれば、その企業にこんな風に変えられないか、といったように改善のための働きかけができるようになります。