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2022.02.18 08:30

オランダの人気音楽フェス「DGTL」が、家で寝て過ごすよりもサステナブルな理由

田中友梨
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2015年には、多くの人がミュージックフェスティバルで食べたがるようなハンバーガーやチキンなどのフードメニューを提供していました。ただ、人気のあった肉類をメニューとして用意することによる環境負荷を計算すると、フェスティバル全体の3分の2にも上る環境負荷の原因となっていたことがわかりました。

よって、2016年から私たちはベジタリアンメニューだけを提供しています。環境負荷を減らしたいですし、イベント参加者に、一日ベジタリアン体験をするというインスピレーションを持ち帰ってほしいと考えているからです。「意外においしい!」「ベジタリアンの食事もおもしろい」と思ってもらえたら、変化はフェスティバルの場だけに留まりません。

また、食品パッケージの改善も続けてきました。缶素材を用いたり、再利用を前提としたハードカップを用いるなど、使い捨て素材を減らしてきました。

環境負荷をなくし、廃棄を極限まで減らす方法を考え、ひとつずつ実験と実践を繰り返し、向上できるところはしてきました。初めは小さな実験の寄せ集めでしたが、今ではより体系だったサステナブルイベント運営のためのフレームワークとして完成しつつあります。

現在では、DGTLはイベント運営を5つの分野ーーー資源&廃棄物システム、食料システム、水と衛生システム、輸送・移動システム、そしてエネルギーシステムの5つの分野に分けて、サステナブルな運営の仕組みを確立しています。

2021年9月の開催で100%サーキュラーな音楽フェスティバルを達成する見込みです。サーキュラーフェスティバルを達成したとしても様々な向上の余地があるため、さらなる前進を目指し続けます。私たちDGTLは、様々な企業、都市、国のインスピレーションになりたいのです。こんなことが本当にできるんですよ、と示していきたいのです。

DGTLに来る理由はあくまでも最高の「音楽体験」


よく、DGTLの参加者は環境意識の高い人ばかりなのではないか、という質問を受けます。

でも、実際DGTLにサステナビリティだけが理由で参加する人はほとんどいません。2013年の発足以来、DGTLは世界最先端のエレクトロニック・ミュージックを参加者に提供するという信念を持ち続けてきました。DGTLの参加者は、音楽体験、さらには音楽フェスティバル体験のためにフェスティバルに足を運びます。現実から解放され、音楽のなかで自由を感じたい、自分をありのままに自己表現したい。そしてDGTLは自由に自己表現できる安全な空間だから、来てくれるのです。

もちろんサステナブルなイベントのあり方や社会のあり方を考えるために視察的に来る人もいるかもしれませんが、それはごく一部です。人々がDGTLに来る理由は、あくまでも最高の「音楽体験」なのです。

好きな音楽フェスティバルが、環境負荷少ない方法で行われていると知ったら、より良い気分で参加できますよね。参加者にとってサステナビリティは参加の目的ではありませんが、体験価値全体を向上してくれるひとつの要素となるはずです。

【参考】レボリューション財団、 音楽フェスティバルDGTL

この記事は、2021年7月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。

文=西崎こずえ

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