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2022.02.14 08:00

社会を「最適化」するためのOSへ

山城悠は2018年11月、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が推進する大学発新産業創出プログラム(START)を通じて、量子アニーリングの研究者を結集させたJijを設立した。

量子アニーリングとは、量子力学を使用した組み合わせ最適化向けの計算手法のこと。量子アニーリング方式のコンピュータを扱うには高い専門性をもつ技術者が必要だが、同社では、事業会社が専門知識の必要なしに最先端のアニーリングマシンを扱えるようにするミドルウェアのクラウドサービス「JijZept」を開発。21年7月には、パブリックβ版を公開した。

ANRIでディープテック領域を中心に担当する鮫島昌弘は、18年12月にJijにシード投資。20年8月には追加出資を行った。鮫島はなぜ投資したのか。


鮫島:山城さんとは彼が起業する前からのお付き合い。僕はもともと理系の出身で、日本の科学技術を世界に広げていきたいという思いがあり、量子コンピュータ領域のベンチャーをつくらねばならないという使命感をもっていました。そこで、17年にSTARTを通じて、東京工業大学西森秀稔研究室出身の先生たちと一緒に「量子アニーリングで加速する最適化技術の実用化」というプロジェクトを始めたんです。そこに参画していたメンバーのひとりが山城さんでした。

山城:僕は研究員として携わっていました。大学院生だったこともあり、もともと社長になるつもりで参画したわけではなかったんですが、大きなチャンスをいただけるということで挑戦しようと決めたんです。

鮫島:社長の候補を選ぶために、最初は外部にいい人はいないか探していたのですが、技術を深く理解したうえで事業化しないといけないのでハードルが高くて。そのときに目をつけたのが山城さんです。いろいろと話をしていると、とても事業化についてののみ込みが早く、ビジネスのことをしっかりと理解していて、アカデミアの難しい言葉も僕らにわかりやすい言葉でちゃんと解釈してくれる。その「言語化力」の高さに引かれました。

それから、山城さんが所属する西森秀稔研究室は、量子アニーリングの基礎的な理論を世界で初めて提唱した偉大な研究室。でも、実際のマシンを最初につくったのはカナダのD-Wave Systemsというベンチャーだった。日本で生まれた理論なのに、実用化で海外に先を越されたことはすごく悔しいですが、ハードウェアは先行されても、ミドルウェアやアプリケーションの領域ではまだ世界を取れる可能性がある。そこに深く共鳴してくれた。
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文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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