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2022.02.14

社会を「最適化」するためのOSへ


山城:実際、鮫島さんを含めてANRIのメンバーの皆さんは、研究開発をすごく応援してくれていると感じます。いまは研究開発に人員のほとんどを割いていますが、ほかのVCの方だと、事業化のタイミングを意識して、いろいろと苦い指摘をもらうこともあると思うんですよね。

それから、ANRIは僕らみたいな研究開発型のベンチャーだけでなく、インターネット系などの「ザ・スタートアップ」といった会社にも多数出資していて、そこのメンバーの方たちの話が聞けるコミュニティに入れたことは大きかった。ディープテックの人たちとも、もちろん交流はしているのですが、研究開発の話がメイン。組織のつくり方などのノウハウはこちらのコミュニティの人たちの知見がとても参考になります。

鮫島:確かに、前回の資金調達のときにも、事業化を重視する方面からは、より早期に売り上げを立てることに注力すべきだという声がありましたね。短期的に量子アニーリングのコンサルティング事業などで売り上げをつくる方法は確かにある。でも、それをするために山城さんはこの会社をつくったわけじゃない。

山城:そうですね。量子アニーリングの組み合わせ最適化技術は、これからの社会のインフラ基盤になると考えています。僕たちの「JijZept」は、その新しい計算機のうえで動くミドルウェアなので、その意味では社会のOSになる。Windowsが世界に浸透することで、いろんなアプリケーションが生まれて社会が変わっていったように、JijZeptを通じて、いろんな企業がよりビジネスをスケールできるようにしていきたい。

鮫島:今後、JijZeptを社会実装させるために、ビジネス開発に向けた人材の採用や、パートナーなのネットワーク構築の面は投資家として支援していきたい。最近、国内では、SaaSを手がけるスターアップが勢いづいていますが、世界を大きく変えるのは、Jijのような研究開発型のベンチャーだということを証明していきますよ。


さめしま・まさひろ◎ANRIジェネラルパートナー。1983年、鹿児島県生まれ。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修士課程卒。三菱商事、東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)を経てANRIに参画。(写真左)

やましろ・ゆう◎Jij代表取締役CEO。1994年、沖縄県生まれ。東京工業大学大学院理学院物理学系物理学コース西森研究室博士後期課程に在籍。2018年11月に量子アニーリング領域の研究開発型ベンチャーとしてJijを創業。(同右)

文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.088 2021年12月号(2021/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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