この3つのキーワードが表す日本企業の特性は、今日の資本市場では弱さや脆さの要因となることが多く、それは市場自体が “ヨーロッパを出自とする彼らの行動様式” に合わせて作られたものであることが原因です。それでも筆者は、考える対象を「戦う場」の定義まで広げれば、日本企業の特性は強力な武器に転じられると考えています。
今回は社会のデジタル化によって実現しつつある「完全競争市場」の中で、日本企業にしかできない立ち回り方、ビジネスにおける “勝ち筋” を提案したいと思います。
自ら「戦場」を選ぶことからはじめよう
グローバルジャイアントと呼ばれる新興企業は、データとテクノロジーを駆使した新たなビジネスによって未曾有の成功を収めています。彼らがこの世の春を謳歌する今日の資本主義市場において、日本企業はどのような戦略や戦術をとるべきでしょうか。戦い方を考えるうえで、ひとつの大切な選択をしなければなりません。
それは「戦場」の選択です。
簡単に言えば、グローバルジャイアントと同じ土俵(今日の市場)で戦うか、日本の強みが活きる市場を作るかの選択です。
もし前者を選ぶのであれば、先行するグローバルジャイアントにならい「スピード」と「スケール」を徹底する必要があります。ゲームのルールと勝つための要諦が定義され日本企業の独自性が入り込む余地は少ないです。
第二次世界大戦中「マッカーサーの参謀」と言われ、優れた分析力で知られた日本陸軍堀栄三氏の言葉「アメリカ軍の鉄量に対するには鉄量を以ってするほかなし」に学び、他企業を凌駕するスピードとスケールを充足する必要があります。
作成:アクセンチュア
一方、日本の独自性を活かせる新たな市場創造を考える場合、その市場はどこにあるのでしょうか。
上に示したのは、縦軸に「デジタルの発展度」、横軸に「市場の大きさ」を取った模式図です。グローバルジャイアントがメインターゲットに据えている市場は一番左端のエリア、つまりデジタルで完結し、かつ場所や言語を選ばず世界共通で存在するニーズに応えるプロダクトやサービスが該当するビジネス領域です。Google検索、TwitterやInstagramなどのSNS、NetflixやAmazon Prime Videoなどの映像配信サービスなどが該当します。ユーザー数が10億人を超えるサービスも珍しくない領域です。
図の中間に位置するのが、デジタルで完結しうるものの、国ごとに異なる法令や税制への準拠、許認可を要するビジネス領域です。これまでですと、通信や製薬、自動車など「国境がある産業」と言われていた領域で、最近ではUberのようなライドシェアサービスなどがこのエリアに当てはまります。グローバルジャイアントが次に狙おうとしている市場です。
さらに図の右側は、地域特性や文化の違いに対応すべきビジネス領域で、右に行けば行くほど考慮すべき項目が増えていきます。たとえば同じ日本でありながら異なる文化や嗜好をもつ関東と関西で、サービス内容を変えるようなイメージです。完全自動運転の実現が難しいのも、その技術だけではなく、高精細な地図を地域ごとに揃える必要がありそのコストが膨大であることがあげられます。それぞれの市場は小さいですが、世界中に無数とも言えるほど多くのマーケットが存在するビジネス領域です。