買えるソニーのEV誕生へ VISION-Sを強くする「3本の矢」とは

VISION-S 02の車内空間のイメージ。独自の立体音響技術「360 Reality Audio」を搭載する予定


2つの車種に共通する「現実性」


今年のCESでは、先に試作車を公開したセダンタイプの「VISION-S 01」に加えて、新しいSUVタイプの「VISION-S 02」も発表された。デザインは、ソニーグループのクリエイティブセンターが手がけている。それぞれに最終形を意識したデザインなのだろうか。

「当初イメージしたものにかなり近付いた。これから事業化に向けて詰めて行くべき箇所もあるが、自動車のデザインは最も安全性が重視されることから、今後突飛なデザインに変わることはない。今の形には現実性があり、なおかつ付加価値を認めていただけると自負している」(川西氏)


今回のCESで発表されたVISION-Sの試作車はSUVタイプ。初代のセダンタイプを「01」、新しいSUVを「02」とした

現在のVISION-Sの試作車には、安全走行をサポートするソニーの車載向けCMOSイメージセンサーなど、車内外に計40個のセンサーが搭載されている。市場に投入される頃にはいくつかのセンサーがひとつのシステムに統合され、数が減ることで省電力化にも貢献するかもしれない。

川西氏は発売時期やターゲット層、価格について明言を避けつつ、「時勢に合わせることの大切さや、競合に対して遅れを取るべきでないこともわかっている。スピード感を持って取り組む」という考えを強調した。

ソニーモビリティでは「動くもの」全般を扱う


今春には新しい事業会社であるソニーモビリティを設立し、EVの市場投入を本格的に前進させる。川西氏は「モビリティ=クルマと捉えられがちだが、同社ではモビリティという言葉をより広義に捉えながら、ソニーが展開する“動くもの”全般を扱うことになるだろう。あるいはロボティクスも含まれるかもしれない」と述べている。

VISION-Sを中核とするモビリティ事業は、ソニーグループの他のビジネスエリアに良いシナジー効果を生む可能性もある。現在のソニーが主力に掲げる事業領域は「コンシューマエレクトロニクス」「イメージング&センシング」「ゲーム&ネットワーク」「音楽」「映画」「金融」の6つ。

「例えば、VISION-S専用の自動車保険をパッケージにして、金融部門の新しいサービスを立ち上げることもできるのではいか」と、川西氏は話す。VISION-Sはソニーの主力ビジネスのすべてに関わり、集約した出口として位置付けることもできそうだ。


CESのプレスカンファレンスでは、ソニーグループの吉田憲一郎社長が「ソニーモビリティ」を今春に設立することを発表した

川西氏は、EVの領域にも活かせるソニーの技術が数多くあると説いている。中でも、安心・安全な走行を支援する「センシング」、アップデートによる進化の土台を担う「ネットワーク技術」、さらにソニーが培ってきたオーディオビジュアルやゲームなど「エンターテインメント」の領域のノウハウは、今後ソニーのEVの強みを際立たせるために欠かせない「3本の矢」となりそうだ。
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文=山本 敦

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