一部のウェルネス専門家からは、現代の健康習慣においては、個人の健康をかたちづくる心と体だけでなく、デジタルという分野にも対応すべきだという声が上がっている。
米国では、93%の人がインターネットを使っている。その一方で、健康に関する報道のなかで、デジタルウェルネスが取り上げられることは、まだ少ない。
デジタルウェルネス・インスティチュート(Digital Wellness Institute)の共同クリエイターで最高経営責任者(CEO)も務めるニーナ・ハーシャー(Nina Hersher)は、オンライン習慣が健康にどのような長期的かつ現実的な影響をもたらすのかについて、テクノロジー利用者を対象にした啓蒙活動を行っている。
たとえば、ソーシャルメディアを使っていると、友だちとメッセージをやり取りしたり、ビデオでチャットができたりするため、メンタルヘルスの改善に役立っている気がするかもしれない。しかし、使いすぎた場合には、「FOMO(取り残される不安)」に悩まされる可能性もある。
健全なバランスを保つための鍵は、「使う側が疲弊することなく、活力を得られるようなかたちでテクノロジーと付き合っていくにはどうすればいいのか」という問いに対する答えだ。
テクノロジーが心身の健康にもたらす影響
この記事をオンラインで読んでいるなら、画面を見つめているせいで、目の疲れやかゆみを覚えているかもしれない。「デジタル眼精疲労」の症状に悩まされているのは、あなたひとりではない。
眼科治療の事業者団体Vision Councilが2016年に実施した調査では、コンピューターやスマートフォンの利用者のうち、デジタル眼精疲労を感じている人の割合が65%に上ることが明らかになった。神経科学ジャーナル「JNeurosci」で発表された研究論文では、コンピューター画面などから発せられるブルーライトが睡眠サイクルを乱し、一時的な目の炎症を引き起こすことが示された。
スマートフォンやコンピューターの画面を見つめているときは、そうでないときと比べて、1分間のまばたきの回数が減少する傾向がある。しかし、まばたきをせずに画面を見つめてばかりいると、ドライアイや目のかすみ、頭痛を引き起こしかねない。
デバイスを使う頻度が多いと、首や腰、肩にも、かなりの負担を与えることになる。コンピューターを使う人の3分の1は、画面の前に数時間座っていると、首や腰、肩に痛みが出ると訴えている。こうした痛みや不快感の症状があまりにもよく見られるため、指圧師のあいだでは「スマホ首」と名前がついたほどだ。