「富獄三十六景」は北斎72歳の作。ネットワーク科学が弾き出した『成功と年齢の関係』

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現在もっとも多く引用される研究者の1人、ボストンの名門ノースイースタン大学ネットワーク科学部門教授アルバート・バラバシ博士の著書『ザ・フォーミュラ』(光文社刊)は、パフォーマンスと成功との関連性を、データとネットワークの観点から徹底的な科学をベースに解き明かした本だ。本稿では東大落第と東大卒、「将来の成功率」は同じ? ネットワーク科学が証明に続き、同書で論じられている「成功の科学法則」について紹介する。

若い時期の成功が多いのは「チャレンジ数が多い」から?


私たちは、相手や自分の年齢を常に気にかけ、「もう歳だから」を合言葉に新しいことへの挑戦をあきらめてしまいがちだ。もれなく例外ではない筆者にとっても耳寄りな、「人は年齢に関係なく成功できる」という事実が、こちらも科学的裏付けとともに、本書では紹介されている。

アインシュタインは、二十代の時の発見によってノーベル賞を受賞し、「30歳までに偉大な論文を発表しなかった者は、生涯、偉大な論文を発表しない」という、歳を重ねることに対して陰鬱な気持ちになるような言葉を残した。

同博士はこの、若い世代にしかイノベーティブな発見やアイデアは得られないという既成観念に疑問を投げかけ、また、事実が異なることをデータで検証した。取り上げたのはアカデミックな世界の実績で、研究者が発表する論文の数と、論文の価値を締める指標の一つである、論文が他の論文に引用された回数に着目した。

実際のところ、「研究者が発表する論文の数を調べると、研究生活の初期が圧倒的に多く、生産的だった」という。一方、引用回数についてみると、研究者にとってその論文が最初に書いたものであろうと、二番目であろうと、最後の論文であろうと、最も引用回数が多くなる可能性は同じだったというのだ。「研究者が立て続けに論文を発表するあいだは、大きな成功を掴みやすい。論文を矢継ぎ早に発表するその時期に、研究者がより創造的だからではない。より集中的に発表するからである」。

つまり、若い頃の研究論文の質が高いからではなく、若い頃に多数の論文を発表する研究者が多いために、引用回数が多い論文が若い頃に発表したものに集中している、ということだ。逆にいうと、生産性を年が上がってからも保ち続けられるのであれば、成功を掴む確率は若い頃と何ら変わらないということになる。

同博士は言う。「宝くじを買い続け、その成果を発表し続ける限り、イノベーションそのものに年齢制限はない」。いくつになっても、チャレンジし続ける限り、成功する可能性はそこにある。等しく老いていく存在である私たちにとって、そして中年にさしかかっている者にとって、何と力強いメッセージだろうか。

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文=高以良潤子 編集=石井節子

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