白スニーカーが意味するのは?
特に印象的だったのが、スニーカー着用率の高さ。中でも白スニーカー着用の登壇者を多く目にした。白スニーカーといえば、スポーティでありカジュアルの代名詞だ。これはすごい変化と言える。
スピーカーとして登壇する男性の場合、カジュアルダウンした装いだとしてもパンツはダークカラーが大抵だ。そこに黒のスニーカーを履けば、革靴よりは全体像での快適さも加えられ、わざわざ足元だけに注目を集めることもない。
しかし、そこに一目で確認ができる白のスニーカーを持ってくるということは、”ビジネススーツ社会”からの脱却を意味する。そこからは、「仕事はオフィスではなく自分が望んだ場所でする」「健康的で快適な未来の暮らしを豊かにする」というメッセージや、「自分個人としての快適さを追求する」という姿勢が見て取れる。
世界中のメディアが注目するプレスカンファレンスで、白スニーカーを履く人が続出したとなれば、これは確実に時代が動いたと判断できる。
実は筆者が長年続けていることの一つに定点観測がある。4年前、NYの老舗高級百貨店バーグドルフ・グッドマンにて定点観測をした際、メンズ館のディスプレイの足元が白スニーカーだらけだったことを思い出した。
筆者のInstagramよりこの投稿をInstagramで見る
この頃はすでに、世界全体でビジネスシーンの装いのカジュアル化は始まっていた。なので、別に驚きはしなかったが、カジュアルスーツとはいえ白スニーカーを合わせて着用する人がどれくらい出てくるだろうか?とは思っていた。
2022年1月現在、この写真を改めて見てみてもまったくおかしいと思わない。そして、それを履いてステージに上がる人がこれだけ出て来たことに、「おおー」という感覚を覚えた。
地面に一番近い場所で着用するのが靴。当然汚れやすいし傷みやすい。それにもかかわらず白スニーカーを履くことで、なにが得られるのか。
白いスニーカーからは、立ち上がるかのような、清潔で颯爽とした、活動的かつ健康的なプレゼンスを感じる。この混沌とした世の中において、「真っさらな状態で、しっかり足元を踏みしめている」そんなプラスの印象を見る人々に与える。
それをビジネスシーンで履きこなせるのは、意思・精神・肉体の各所にこれまでに積み上げてきたスポーティな要素を宿した人だろう。そうでない場合、スーツ姿にスニーカーを合わせた瞬間、「靴ずれで借り物のズック靴を履いた情けない人」の図が出来上がる。
カジュアルなようでいて、簡単にはシンクしてくれない、一朝一夕では取り入れられないアイテムなのだ。それゆえ履く人の覚悟が現れる。