ビジネス

2022.01.15 10:00

「グリーンウォッシュ」の7つの罪と、それ以上の危機


H&Mや航空会社に疑問の声


例えばH&Mは2019年に「コンシャスコレクション」を発表し、オーガニックコットン・リサイクルポリエステルを使用した環境にやさしい持続可能なファッションだとするキャンペーンを世界で展開した。すると、ノルウェー消費者庁によってこれは「グリーンウォッシュである」と指摘を受け、違法であるという判断を受けてしまった。
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imageImage via H&Mウェブサイト

コンシャスコレクションは、実際にどの製品のどの生地に何%リサイクル素材を使用したのかといった具体的な根拠が示されておらず、また、リサイクルポリエステルを使った環境に優しいTシャツを謳うもポリエステルTシャツは製造工程で約2万リットルと多量の水を使用することなどから、本当にサステナブルであると言ってよいのか疑問視する声が上がっていた。

ノルウェー消費者庁は、同社の情報開示は「不十分」であり、根拠を示さないまま販促のために環境に良いと広告するグリーンウォッシングにあたると指摘した。ノルウェーのマーケティングに係る現行法では、製品の主な品質に関する主張は、消費者が容易にアクセスでき、理解できるものでなければならないとされている。根拠なしに環境に良いと表現し、販促につなげる行為は違法に当たるのだ。
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アイルランドの格安航空会社ライアンエアーは、2019年9月に公開された広告の中で自社こそがヨーロッパの大手航空会社の中で最も環境負荷が低いと主張した。イギリスにある広告基準局(Advertising Standards Authority)はこの広告の主張は誤解を招く恐れがあり、正当な裏付けがないと断定。さらに2020年2月この広告はグリーンウォッシュであることを理由に英国の監視委員会によって禁止処分を受けた。


imageRyanair ウェブサイトより(なお現時点ですでに同社ウェブサイトからは削除されている)

主張を裏付けるために利用されていたデータは2011年までのものであり2019年の現状に即していなかった点や、「ヨーロッパで最も」と主張するもののヨーロッパの大手エアライン複数社が比較対象に挙げられておらず、この主張の根拠となる情報が報告書から抜けていた点が理由だ。

近年飛行機による移動は環境に大きな負荷をかけることが広く知られるようになり、エアライン各社はなんとかして環境にやさしい取り組みをアピールしたい思惑があった。少しでも環境に配慮したブランドであることをアピールし、客足を伸ばしたかったライアンエアーだが、むしろ顧客の不信感を募らせ逆効果となってしまった。

この例からもわかるように、グリーンウォッシュを行うことで、ブランドも社会も大きな損失を受ける。現在のグリーンウォッシングが横行する状況から世界の消費者は疑心暗鬼になっており、5人に1人が「ブランドのサステナブルであるという主張を信用しない」と考えるほどである。

実際にブランドとして環境負荷を減らし、自然を再生する取り組みを行っていたとしても、取り組みに関する情報発信を誤ると何もしないよりもネガティブなイメージがつきかねない。

さらに、消費者からの共感を裏切るだけでなく、投資資金の呼び込み失敗・優秀な従業員の維持・獲得も困難になる。企業として掲げるビジョン・ミッションは遠のき、気候危機への対策が遅れることで環境破壊・資源枯渇は加速する。
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文=西崎こずえ

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