ビジネス

2022.01.15

「グリーンウォッシュ」の7つの罪と、それ以上の危機


ガイドライン策定の動きも


この原因は、これまで環境・社会に対する取り組みに関する情報発信における定義付けや法整備が追いついていなかったことにある。結果現在のような混乱を招いてしまっているといえる。

世界の多くの国が最優先順位に位置づけ推し進める気候危機対策を取り巻く混乱が続けば、各方面への影響も当然避けられない。この混乱に歯止めをかけ、作為的であろうとそうでなかろうと、企業によるグリーンウォッシングを排除し、きちんと取り組む企業は活動を続けられるよう、ガイドラインを策定する動きがある。

イギリスの競争・市場庁(CMA)は今年9月20日、企業が消費者保護法を遵守すること支援するための「グリーン・クレーム・コード(グリーンな主張に係る規範)」を発表。この規範に従うことで消費者に誤解を与える可能性が低くなり、法律に違反する可能性も低くなるとしている。

逆にこれらの原則に従わない場合企業にとっては訴訟リスクが高まることを意味する。これはイギリスの外に拠点を置く企業にとっても非常に参考になるだろう。このグリーン・クレーム・コードが定める規範は次のとおりだ。

・主張は真実かつ正確でなければならない。
・主張は明確で、曖昧であってはならない。
・主張は、重要な情報を省略したり隠したりしてはならない。
・比較は公正で意味のあるものでなければならない。
・主張は、製品またはサービスの全ライフサイクルを考慮しなければならない。
・主張は実証されなければならない。

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Image via イギリス政府「Green Claims Code」のキャンペーンサイト

さらに、いくつかの国でガイドライン策定や法整備を進める動きもある。

沈黙はグリーンウォッシュよりも危険


前述の通り、「グリーンウォッシング」が次々と非難され、時に「違法である」といった判決を受けるといった流れを見ると、企業にとっては環境や社会に良い影響を与えるための取り組みや情報発信自体やめた方が良いのだろうか、といった考えが頭をよぎるかもしれない。

そんなあなたに伝えたいことがある。

「沈黙はグリーンウォッシュよりも危険である」

先日イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26の場で、イケアグループ(インカ・ホールディングB.V. およびその管理下にある事業体)の社長兼CEOにジェスパー・ブロディーン氏が語った言葉だ。

ブロディーン氏は他企業に対し、情報を開示しないこと、未来図を示さないこと、そのための企業努力をしないことはブランドにとっても環境にとっても危険だと訴えたのだ。


Image viaインカ・ホールディングB.V.のウェブサイト

ブランドにとって必要なのは、「グリーンである」と主張することでもグリーンウォッシュを恐れて歩みを止めることでもなく、正直に現在の環境負荷や目指す未来までの道のりを開示し、「何が正解であるかわからない」と認め、正解を探すために対話と協力を呼びかけるコミュニケーションを取っていくことのはずである。


この記事は、2021年10月にリリースされたCircular Economy Hubからの転載です。
(※上記の記事は、ミテモ株式会社が運営する世界視点で課題を掘り下げるウェブメディア「Deeper」の「ブランドにとってグリーンウォッシュ以上の危機とは」より転載された記事です)

文=西崎こずえ

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