コロナ禍で生まれた需要を的確にとらえた。マスク供給不足が深刻化した20年春、同社は中国の仕入れ先から大量の不織布の調達に成功し、マスクとして1億枚を販売。20年7月期はマスクだけで38億円の売り上げを計上した。
21年7月期はマスク需要がひと段落したが、今度は安価な高透明度PET素材を使用した感染対策用パーテーションを開発し、150万セットを販売。さらに、全国の小中学校で生徒一人に一台のPC端末の整備を義務づける「GIGAスクール構想」の推進が本格化したことを受けて、PC収納バッグや液晶タッチペンといった関連グッズを続々と発売し、文教向けでも売り上げを積み上げた。
背景にある強みが企画開発力と調達力だ。アーテックは全国に構築した販売店網からニーズを日々吸い上げて、年間で1000点の新商品を開発。少量でも「まずはつくる」をモットーとしている。幼稚園・保育園から小中高校、大学・専門学校までの教材に総合的に対応し、運動会・発表会や防犯・防災グッズなど学校生活のあらゆるシーンが対象だ。
商品化のサイクルが短く広域にわたるため、調達ルートも精力的に開拓してきた。中国の仕入れ先からマスク用の不織布を調達できたのも、もともと運動会で生徒が着用する法被などの商品の素材として、数百万着分の不織布を取引してきた実績があるからだ。
代理店のなかには、「マスクなどの衛生用品がきっかけで、数年ぶりに取引をした相手も少なくない」と藤原。「ニーズを徹底して掘り起こして、今後もお客様や商品カテゴリを意識的に広げていきたい」。
ふじわら・えつ◎1970年、兵庫県生まれ。龍谷大学文学部を卒業後、93年4月にアーテック入社。教材事業部の営業統括責任者を経て、2013年7月より代表取締役社長。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020関西大会」パイオニア賞受賞。