このほど、医師同士が遠隔地で医療コミュニケーションを取るためのアプリ「Caseline」をリリースした。代表取締役の菅原俊子は、「新サービスは、実際の臨床の現場に貢献するという意味で、私たちにとって念願のものでした。世界中の専門医たちが協力しながら治療に臨むことができるようになります」と意気込む。
同社はこれまで、医師同士が互いの医療技術を高め合うための症例検討プラットフォーム「e-casebook」を運営してきた。オンライン上で医用画像を共有して学会や研究会、情報共有ができるサービスで、世界中の医師たちのネットワークを構築。126の国・地域で利用されている。
Caselineは、ここで培ってきた画像伝送の技術を生かして開発した。救急車や専門医が不足している医療機関が、遠隔地にいる提携先の医師とつながり、患者の心電図やエコー検査などのデータを共有しながら、動画と音声通話でリアルタイムに診断。これによって、患者に対し迅速かつ適正な治療を施すことができる。21年9月に医療機器プログラムとして認証を取得し、すでに北海道の名寄市立総合病院などが導入した。
医療の技術情報を共有するツールから、実際の臨床現場で使用するサービスへ。オンラインでの学会や研究会の開催という、ハート・オーガナイゼーションの事業そのものが、医師たちの課題を収集する機能を果たしていることは、医療現場のニーズに即したサービスを開発できたことと無関係ではないだろう。コロナ禍で対面コミュニケーションが難しくなった影響もあり、e-casebookのユーザー数は4万人とこの1年間で2.5倍に拡大。売上高も過去2年で6倍に伸びた。世界中の医師たちが連携して、医療の底上げを行う土壌が育ってきたのだ。
「最適な医療を実現するために事業をやってきました。Caselineは国内の循環器領域から普及を進めますが、需要がある領域にはどんどん広げていきたい」
すがわら・としこ◎大阪府出身。外資系製薬会社マーケティング本部での経験を経て、2000年にハート・オーガナイゼーションを創業。04年に法人化。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020関西大会」大賞。