経済・社会

2022.01.09 14:00

ワクチン接種証明の活用で経済回復を


さらに、日本の経済活動回復を遅らせているのが、非合理的な「水際対策」だ。外国人へのビザが発給停止となったままなので、来日希望の外国人は、ワクチン接種済みでも、ずっと門が開くのを待ち続けている。日本人が外国出張から帰国する際は、14日間の自己隔離が求められている。搭乗前のPCR検査、到着時のPCR検査の両方陰性でも、さらに14日間の自己隔離をしなくてはいけない。これでは、帰国後のことを考えると、ビジネス出張はためらわれる。

是正を求めて経団連が要望書を出した。その答えとしての規制緩和は、ワクチン接種証明があれば、自己隔離日数を10日に短縮する水際対策の変更を行ったが、実は10日目にPCR検査を(自費で)受けることが条件になっている。短縮幅がたったの4日間であることと、10日目のPCR検査があることで、規制緩和効果は極めて小さい。これではビジネス往来もできず、インバウンド観光客の再来もない。

日本のワクチン接種率はアメリカの全国平均よりも高くなった。外国からの帰国者や訪問者に搭乗前と、到着時のPCR検査を課しているので、さらなる長期間の自己隔離は、すでに合理的ではない。PCR検査とワクチン接種証明義務化で、日本の自己隔離をせめて3日間くらいに短縮すれば、ニューヨーク-東京間をはじめ、ワクチン接種の進んだ先進国と日本の間の乗客数は大きく回復することになると思う。アジアの感染状況が改善できれば、自己隔離期間短縮で大きくインバウンドの人数が急激に増加することになり、地方の観光業、宿泊施設、などに恩恵がある。

ワクチン接種証明を十分に活用しないことの経済コストは甚大だ。(10月5日記)


伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著 に『Managing Currency Risk』(共著、2019年度・第62回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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