10月に入り、日本でもアメリカでも、経済・社会活動の再開が続いている。日本では、すべての緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が10月1日から解除された。これで、飲食店は営業時間の延長が認められ、酒類提供も再開された。さらにイベントやテーマパークの入場者数も引き上げられて、一歩一歩、ニューノーマルへと進んでいるように見える。
一方、ニューヨークでは9月から、ワクチン接種を条件に、オペラ、コンサート、ブロードウェイ・ミュージカルが1年半ぶりに再開している。野球など大規模イベントも次々と観客を入れて開催。最近、大学の同僚や金融関係者に1年半ぶりの面談をする機会が増えているが、長い忍耐を経て、ようやく、コロナとの闘いに勝ったね、というあいさつを交わしている。コロンビア大学では、教職員、学生の全員にワクチン接種は義務化され、1学期の始めにPCR検査を受けて、さらに毎日の健康チェックの自己申告をしないと、大学の建物に入ることができない。授業はすべて対面方式に戻った。留学生もちゃんと入国できているようだ。
ニューヨーク市内のレストランの屋内席の利用には、ワクチン接種証明の提示が必要だ。コロナ感染最盛期に屋内席が全面禁止となり、多くのレストランで屋外テラス席が大幅に増設されたが、そこでの飲食にはワクチン接種証明提示は必要ない。ニューヨーク州の公立小中高校の教職員および医療関係者にはワクチン接種が義務化され、1回目の接種を10月7日までに終えなかった人は無給休職もしくは解雇された。ユナイテッド航空も乗務員にワクチン接種を義務化、従わない人を解雇した。
このように、米国では、ワクチン接種証明の義務化を条件に、経済・社会活動の再開を急速に進めている。米欧間の国際線フライトも、双方でワクチン接種が進んでいることを背景として、搭乗前のPCR検査は必要だが、到着後の自己隔離は実質免除されつつある。
日本では、どうもワクチン接種証明の利用に後ろ向きだ。ワクチン接種証明提示の義務化も「差別である」として、実施は難しいという意見が主流だ。したがって、ニューヨークのような教職員の接種義務化も航空会社の乗務員のワクチン接種義務化も、できないだろう。ワクチン接種証明を活用しないことは、経済活動再開を遅らせるか、あまりにも急激な移動や人出を促して再び感染拡大につながるかのどちらかではないか。